岸田政権は12日、新型コロナウイルスの感染再拡大に備えた取り組みの「全体像」を公表した。これまでの対応は全体が見えにくく、国民に不安と不満を抱かせたとの分析からだ。ただ、根幹に位置付けた医療提供体制の強化は安倍・菅政権も進められなかった課題で、自民党内では「絵に描いた餅」に終わりかねないとの懸念も出ている。
 「感染状況は落ち着いているが、重要なのは最悪の事態を想定し、次の感染拡大への備えを固めることだ」。岸田文雄首相は12日、首相官邸で開かれたコロナ対策本部の会合で、全体像に基づいて取り組みを進めるよう関係閣僚に求めた。
 首相が全体像の取りまとめを指示したのは10月4日の就任当日。安倍晋三元首相はコロナ対応に忙殺される中、持病が再発して退陣。菅義偉前首相は感染再拡大で支持率が急降下し、退陣に追い込まれた。迅速な対応の背景には、かじ取りを誤れば政権が揺らぎかねないとの危機感がにじむ。
 そこで全体像は、前政権までの取り組みを踏まえ、「ワクチン―検査―治療薬」の流れで感染を抑えつつ、コロナウイルスの感染力が2倍になって再拡大を招いても医療を提供できる体制を整えると踏み込んだ。
 具体的な方策として、公的病院の専用病床化などを通じ、今夏のピーク時より1万人多い3万7000人が入院できる体制を月末までに構築すると明記。軽症者向けの宿泊療養施設も1万4000室増の6万1000室を確保するとぶち上げた。全国約3万2000の医療機関と連携し、全ての感染者が陽性判明の当日か翌日に診療などを受けられるようにする方針も打ち出した。
 問題はこうした計画にどこまで実効性があるかだ。医療提供体制強化は安倍、菅両氏も手を焼いた難題。法改正で病院に勧告できるようにしても病床確保は進まず、今夏には自宅で亡くなる感染者が続出した。小規模な民間病院が多い日本の構造的問題も背景にあるとされ、菅氏は退陣時に「医療体制をなかなか確保できなかった」と認めた。
 全体像は首相が9月の自民党総裁選で掲げた「医療難民ゼロ」などの4本柱がベース。専門家からは「感染力2倍、3倍との想定がそもそも非科学的」との声も漏れる。自民党幹部は「全体像の実行は大変だ」と指摘。政府関係者は「第6波が来てからがこの政権の正念場だ」と語った。 (C)時事通信社