わが国では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの接種が進んだこともあり、足元では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が減っている。しかし、ワクチン先進国とされた欧米では感染者は増加傾向にあり、ワクチンの効果を疑問視する声もある。米・疾病対策センター(CDC)のMark W. Tenforde氏らの研究グループは、mRNAワクチン接種の有無別に見た入院や予後などを検討する症例対照研究を実施。mRNAワクチンは、変異株の発症抑制にも有効で、入院リスクを85%抑制したとする結果をJAMA2021年11月4日オンライン版)に発表した。

対象はmRNAワクチン接種を含む4,513例

 今回の対象は、2021年3月11日~8月15日に米国の18州・21施設になんらかの理由で入院し、SARS-CoV-2ワクチンの接種についての情報が得られた4,513例。同ワクチン接種者のうち、mRNAワクチン(ファイザー/ビオンテック製のBNT162b2およびモデルナ製のmRNA-1273)以外のワクチン接種者や、mRNAワクチンでも2回接種を完了していない者などは除外した。2,530例はCOVID-19陽性と認められなかったため対照群に、COVID-19陽性の1,983例を症例群に分類した。

 評価項目は、ワクチン接種の有無と①COVID-19(症例群)または他の理由(対照群)による入院との関連、②COVID-19増悪(死亡または人工呼吸器による治療)との関連-とし、入院日、年齢、性などを調整した調整オッズ比(aOR)を算出した。

ブレークスルー感染はCOVID-19入院患者の15.8%

 症例群のワクチン接種完了者(ブレークスルー集団)は314例(15.8%)で、接種したmRNAワクチンの内訳はBNT162b2が72.0%、mRNA-1273が28.0%、ワクチン接種完了から入院までの期間(中央値)は110.0日。症例群のうち非ワクチン接種者は1,669例だった(非ワクチン集団)。対照群全体に占めるmRNAワクチン接種完了者は54.8%(1,386例)で、内訳はBNT162b2が58.4%、mRNA-1273が41.6%、ワクチン接種完了から入院までの(中央値)は79日だった。

 症例群のブレークスルー集団と非ワクチン集団、対照群の主な患者背景は、年齢中央値がそれぞれ67歳、53歳、62歳、ヒスパニック系の白人が64.0%、43.0%、62.7%、免疫不全例は40.8%、11.5%、23.1%だった。また、症例群のうち、730例において変異株の情報が得られ、英国型変異(アルファ)株が33.6%、インド型変異(デルタ)株が45.9%、その他が20.5%だった。

死亡リスクを59%抑制

 ワクチン接種者のCOVID-19による入院率は症例群15.8%、対照群54.8%で、入院リスクはワクチン接種により85%有意に低下した〔調整オッズ比(aOR)0.15、95%CI 0.13~0.18〕。

 この結果は、アルファ株(症例群8.7%、対照群51.7%、aOR 0.10、95%CI 0.06~0.16) およびデルタ株(同21.9%、61.8%、0.14、0.10~0.21)別に見ても一貫し、また、免疫不全例(同40.1%、58.8%、0.49、0.35~0.69)と比べて免疫が正常例(同11.2%、53.5%、0.10、0.09~0.13)において、よりワクチン接種がCOVID-19による入院リスク低下に寄与していた(P<0.001)。

 同様に、ワクチンの種類別に接種後120日以上のサブグループでCOVID-19による入院リスクを見ると、BNT162b2(症例群5.8%、対照群11.5%、oHR 0.36、95%CI 0.27~0.49)と比べ、RNA-1273(同1.9%、8.3%、0.15、0.09~0.23)でリスク低下が顕著だった (P<0 001)。

 COVID-19による入院患者のうち、増悪(死亡または人工呼吸器による治療)を来したのは、ブレークスルー集団12.0%、非ワクチン集団24.7%でブレークスルー集団のaORは0.33(95%CI 0.19~0.58)、死亡に限るとそれぞれ6.3%、8.6%でaORは0.41(同0.19~0.88)とリスクが59%抑制されていた。

 以上の結果を踏まえ、研究グループは「mRNAワクチンの接種によりCOVID-19による入院やその後の増悪リスクが顕著に低下した」とまとめている。

編集部