近年、日本を含む先進国では100歳以上の百寿者が増加している。百寿者は非百寿者に比べ、重篤な状態にある期間が短いことが示されている。そのため死亡前医療費も低いと予想されるが、百寿者の死亡前医療費について検討した研究は極めて少ない。このほど国立保健医療科学院/奈良県立医科大学の中西康裕氏らは、奈良県の75歳以上の高齢者3万4,000例超を対象にした後ろ向きコホート研究で検討した結果、死亡前1年間の医療費および入院率は非百寿者より百寿者で低く、105~109歳で最も低かったとJAMA Netw Open2021; 4(11): e2131884)に発表した(関連記事「"110歳以上"の生物学的特徴は?」)

国保・医療と介護の連結レセプトデータを利用

 解析には、国民健康保険(国保)の医療レセプトと介護保険レセプトを連結したデータを用いた。対象は2013年4月~18年3月に奈良県に在住していた後期高齢者医療制度の被保険者(75歳以上)で、2014年4月~18年3月に死亡した3万4,317例(女性52.8%)。このうち、872例(2.5%)が100~104歳(女性85.0%)、78例(0.2%)が105~109歳(男性10例未満)だった。

 性別および年齢層別に、入院と外来の患者数、死亡者の入院および外来関連医療費を解析した。また、Jonckheere-Terpstra検定を用いて未調整の医療費の傾向を解析し、一般化推定方程式を用いて併存疾患および機能的状態を調整した月間医療費の中央値を推算した。

105~109歳は44.9%が死亡前1年間に入院せず、医療費も最低

 検討の結果、死亡前1年間の医療費総額(未調整)の中央値は、男女とも高齢になるほど低下する傾向が見られた(P<0.001)。死亡前30日間の医療費総額(調整後)の中央値は、75~79歳で6,784ドル〔四分位範囲(IQR)4,884~9,703ドル〕、80~84歳で5,894ドル(同4,292~8,536ドル)、85~89歳で5,069ドル(同3,676~7,150ドル)、90~94歳で4,205ドル(同3,085~5,914ドル)、95~99歳で3,522ドル(同2,626~4,861ドル)、100~104歳で2,898ドル(同2,241~3,835ドル)、105~109歳が最も低く2,626ドル(同1,938~3,527ドル)だった。

 同様に、死亡前1年間に入院していた患者の割合も高齢になるほど低下する傾向が見られ、全体では75~79歳の94.7%に対し105~109歳で55.1%、男性では75~79歳の95.8%に対し105~109歳で50.0%、女性では75~79歳の92.8%に対し105~109歳で55.7%に、それぞれ低下した。

 特に百寿者では、100~104歳の31.4%、105~109歳の44.9%が死亡前1年間に入院していなかった。

外来医療費は105~109歳で高め

 一方、外来医療費の傾向は異なっていた。死亡前1年間の外来医療費(未調整)の中央値は、100~104歳に比べて105~109歳でやや高かったが、他の年齢層では高齢になるほど低かった。死亡前30日間の外来医療費(未調整)の中央値は105~109歳で最も高かった(585ドル、IQR 247~1,462ドル)。

 以上を踏まえ、中西氏らは「大規模レセプトデータを用いた後期高齢者対象のコホート研究で、日本の百寿者は75歳以上の非百寿者に比べて死亡前1年間における医療費が低く、入院していない者の割合が高いことが示された」と結論している。ただし、105~109歳では44.9%が死亡前1年間に入院していなかった一方で、死亡前30日間の外来医療費が最も高かったことから、「今後は、在宅医療を含めた外来医療とその費用についての研究が必要」と付言している。

(太田敦子)