米・Brigham and Women's Hospital, Harvard Medical SchoolのM.A. Pfeffer氏らは、急性心筋梗塞患者5,661例を対象に、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)とACE阻害薬の有効性と安全性を比較する国際多施設共同二重盲検ランダム化比較試験(RCT)PARADISE-MIを実施。その結果、急性心筋梗塞患者において、ARNIはACE阻害薬と比較して心血管疾患による死亡や心不全の発生率を有意に低下させなかったとN Engl J Med2021; 385: 1845-55)に発表した。

左室駆出率の低下、肺うっ血、または両方合併した心筋梗塞患者を22週追跡

 症候性心不全患者において、ARNIはACE阻害薬に比べ心血管疾患による入院や死亡のリスクを減少させることが分かっている。しかし、急性心筋梗塞患者における両薬の効果を比較した試験はあまりない。

 今回Pfeffer氏らは、急性心筋梗塞患者におけるARNIとACE阻害薬の有効性および安全性を比較するため、2016年12月9日〜20年3月16日に被験者を登録、2020年12月31日までに二重盲検RCTを実施した。

 対象は、心不全の既往のない成人で、試験開始前の0.5~7日以内に左室駆出率(LVEF)の低下(40%以下)、肺うっ血、またはその両方を合併した心筋梗塞患者5,661例(平均年齢63.7歳、女性24.1%)。対象は事前に規定されたリスク補強因子〔①70歳以上、②糖尿病、③心筋梗塞の既往、④スクリーニング時の推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2未満、⑤心房細動、⑥心筋梗塞の指標となったLVEFが30%未満、⑦KillipクラスⅢまたはⅣ、⑧発症後24時間以内に再灌流を伴わないST上昇心筋梗塞を有する〕のうち少なくとも1つを満たしていた。

 2,830例をARNI投与群(サクビトリル97mg,バルサルタン103mgを1日2回投与)、2,831例をACE阻害薬投与群(ラミプリル5mgを1日2回投与)に割り付け、推奨治療に加えて各薬剤を投与し、中央値で22カ月間観察した。

 主要評価項目は、心血管疾患による死亡または心不全(外来で症状のある心不全または入院を要する心不全)の発生のいずれか早い方とした。副次評価項目は、心血管死または心不全による入院、心血管死、全死亡などとした。

心血管疾患による死亡または心不全リスクはACE阻害薬群の0.9倍で有意差なし

 解析の結果、主要評価項目の発生は、ARNI群では11.9%、ACE阻害薬群では13.2%であった〔ハザード比(HR)0.90、95%CI 0.78~1.04、P=0.17〕。

 副次評価項目のうち、心血管死または心不全による入院は、ARNI群では10.9%、ACE阻害薬群では11.8%に発生した(HR 0.91、95%CI 0.78~1.07)。

 心血管死はARNI群で5.9%、ACE阻害薬群で6.7%(HR 0.87、95%CI 0.71~1.08)、全死亡はARNI群で7.5%、ACE阻害薬群で8.5%(同0.88、0.73~1.05)であった。

 有害事象により治療を中止したのは、ARNI群では12.6%、ACE阻害薬群では13.4%であった。

 以上のように、急性心筋梗塞患者において、ARNIはACE阻害薬と比較して心血管死や心不全の発生率を有意に低下させなかった。

 Pfeffer氏らは「われわれの目的は、心筋梗塞後患者における心不全の発症を予防する上で、ACE阻害薬に対するARNIの優位性を示すことであったが、達成されなかった」と述べている。 

(今手麻衣)