亜鉛が急性ウイルス性気道感染症(RTI)による感冒症状の発症を予防し、重症度スコアの低下や症状の持続期間の短縮をもたらす可能性を示唆するメタ解析の結果が明らかになった。オーストラリア・Western Sydney UniversityのJennifer Hunter氏らがBMJ Open2021; 11: e047474)に報告した。

RCT 28件の計5,446例を解析

 急性のウイルス性RTIに対する予防法に関しては、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチン接種を除けば選択肢が限られる。一方、臨床ガイドライン(GL)の多くは手指衛生や不適切な抗菌薬使用の回避、OTC薬による症状緩和などを勧めているが、一部に亜鉛を推奨するものも存在する。そこでHunter氏らは、急性ウイルス性RTIの予防または治療に関し、対照群と比べた亜鉛のベネフィット・リスクを評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマチックレビューとメタ解析を実施した。

 英語と中国語のデータベースを検索して同定した米国、欧州、中国などのRCT28件・5,446例を解析に組み入れた。参加者は全般的に健康で、軽度~中等度のウイルス性RTIの症状を呈する患者であった。なお、参加者にSARS-CoV-2の感染者は含まれていなかった。

プラセボ群と比べて2日早く症状が消失

 解析の結果、プラセボ群と比べて経口投与用または経鼻投与用の亜鉛によって予防できるRTIは100人・月当たり5例と推定された〔95%CI 1~8、number needed to treat(NNT)=20〕。一方、亜鉛の舌下錠によるヒトライノウイルス接種後の感冒症状の予防効果は認められなかった〔相対リスク(RR)0.96、95%CI 0.77~1.21〕。

 また、プラセボ群と比べて亜鉛の舌下投与または経鼻投与用群では2日早く感冒症状が消失していた(95%CI 0.61~3.50)。さらに、プラセボ群では亜鉛群と比べて発症から7日後も感冒症状が続いている成人患者が100人当たり19人多いことも示された(95%CI 2~38、NNT=5)。

 この他、発症から3日後の重症度スコアもプラセボ群と比べて亜鉛群で有意に低下していたが(平均差:-1.20ポイント、95%CI -0.66~-1.74ポイント)、1日ごとの重症度スコアの平均値については両群で有意差は認められなかった(標準化平均差:-0.15ポイント、95% CI -0.43~0.13ポイント)。

 重篤ではない有害事象(悪心、口腔内または鼻腔内の炎症など)の発生頻度はプラセボ群と比べて亜鉛群で高かった(RR 1.41、95%CI 1.17~1.69)。重篤な有害事象の報告はなかった。

剤形や用量の違いによる影響は不明

 Hunter氏らは「プラセボ群と比べて、亜鉛の予防投与は市中感染によるウイルス性RTIの感冒症状、特に発熱などのインフルエンザ様症状の発現リスクを低下させることが示された。また、軽度~中等度のウイルス性RTIの症状に対する治療において、亜鉛は発症から3日後の重症度を低下させ、症状の持続期間を有意に短縮することも示された」と説明。ただし、「重篤ではない有害事象の発生頻度はプラセボと比べて亜鉛で高く、このことは一部の亜鉛製剤の忍容性や受容性の低下をもたらす可能性がある」との見解を示している。また、「剤形や用量の違いが効果に影響するのかどうかについては不明」としている。

 その上で、同氏らは「ウイルス性RTIの予防や治療における選択肢が限られていることを考慮すると、亜鉛の作用機序や最適な投与法、剤形、用量、投与を開始すべきタイミング、投与期間を明らかにするさらなる研究が求められる」と述べている。

岬りり子