大腸がんの数%に見られる難治性のHER2陽性大腸がんに対し、ペルツズマブとトラスツズマブによる抗HER2抗体併用療法の有効性と安全性を検証した医師主導第Ⅱ相試験TRIUMPHにおいて約3割でがんの縮小効果が見られたと、国立がん研究センター東病院の研究グループが11月12日に発表した。HER2陽性大腸がんには有効な治療薬が存在せず、初めて有効性が示されたことから、研究グループは「新たな治療法の誕生につながることが期待される」としている。結果の詳細は、Nature Medicine11月12日オンライン版)に報告された。

組織検体、血液検体の診断例で同等の有効性

 TRIUMPHは国立がん研究センター東病院を中心に全国の7施設で実施された。がんの組織検体を用いた腫瘍組織遺伝子パネル検査(遺伝子パネル検査)または血液を用いてがんのゲノム異常を検出するリキッドバイオプシーで、治療抵抗性となった治癒切除不能な進行・再発HER2陽性大腸がんと診断された患者30例(遺伝子パネル検査27例、リキッドバイオプシー25例)が登録され、ペルツズマブとトラスツズマブの併用療法を行った。観察期間中央値は遺伝子パネル検査(組織検体群)でHER2陽性とされた患者で9.2カ月、リキッドバイオプシーで診断された患者(リキッドバイオプシー群)では7.6カ月だった。主要評価項目は奏効率、副次評価項目は無増悪生存(PFS)、全生存(OS)などとした。

 解析の結果、奏効率は組織検体群では29.6%(27例中、部分奏効以上が8例)、リキッドバイオプシー群では28.0%(25例中、部分奏効以上が7例)と両群で同等の有効性を示した。この結果は、事前に設定した有効性評価基準(25例中5例以上が部分奏効達成)を上回っていた。

 次に、SCRUM-Japan※に登録されたHER2陽性大腸がん患者で、TRIUMPHの被験者と同様の基準を満たした13例において抗がん薬投与の治療効果を調べたが、腫瘍縮小は見られなかった。このことから、研究グループは「ペルツズマブとトラスツズマブの併用療法は治療抵抗性となったHER2陽性大腸がん患者に対し、従来使用されていた抗がん薬と比べて優れた有効性がある可能性がある」と結論している。

リキッドバイオプシーで治療効果を予測できる可能性も

 さらに、組織検体群とリキッドバイオプシー群で治療開始前、治療開始3週間後、病気の進行後と経時的に治療の有効性と血中のゲノム異常との関連を調べた。その結果、両群とも治療前にHER2の遺伝子コピー数が多く、かつ他のがんゲノム異常が併存しないといった良好因子を有する患者では、それらの因子を有しない患者と比べ有効性が高かった。

 PFS中央値は、組織検体群で良好因子を有する例では6.2カ月、良好因子がない例では2.2カ月だった。一方、リキッドバイオプシー群で良好因子を有する例では5.6カ月、良好因子がない例では1.6カ月だった。

 また、治療によるがんの状態の変化を評価した結果、治療開始3週後に行ったリキッドバイオプシーにより、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)が治療前から減少している患者で高い効果が得られた。PFS中央値はctDNAが減少した患者の5.0カ月に対し、ctDNAが増加した患者では2.2カ月だった。このことから、研究グループは「リキッドバイオプシーを繰り返し行うことで、治療効果を予測できる可能性が示唆された」としている。

 治療抵抗性となった後のリキッドバイオプシーを用いた評価では、さまざまながんゲノム異常が新しく出現したことが判明したことから、「がんゲノム異常を考慮することで、HER2陽性大腸がんの治療を改善できる可能性がある」と付言している。

SCRUM-Japanは、希少肺がんの遺伝子スクリーニングネットワーク「LC-SCRUM-Japan」(現LC-SCRUM-Asia)と、大腸がんの遺伝子スクリーニングネットワーク「GI-SCREEN-Japan」(現MONSTAR-SCREEN)が統合して構築した産学連携全国がんゲノムスクリーニングプロジェクト。

(小沼紀子)