米・Cleveland ClinicのMaeve Pascoe氏らは、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)患者約300例を対象に、舌下神経刺激療法(HNS)気道陽圧(PAP)療法の有効性および患者報告転帰(PROs)の改善との関連を比較検討することを目的とし、後ろ向きコホート研究を実施。その結果、HNSでは1年後にPROsの持続的な改善が認められ、3カ月後にはPAP療法と同等の改善効果が見られたとJAMA Otolaryngol Head Neck Surg2021年11月11日オンライン版)に発表した。

エプワース眠気尺度、睡眠質問票、不眠重症度、うつ病重症度を比較

 HNSとPAP療法は、OSAのPROsを改善することが示されているが、両者でPROsの変化を比較したデータや、OSAに併存する不眠症やうつ病をHNSが長期的に改善するかどうかを示したデータはない。

 Pascoe氏らは、HNSとPAP療法でOSA患者の眠気や不眠症、うつ病などの改善効果およびPROsの改善を比較するため、同院で2015年11月1日~18年9月31日にHNSを受けた患者(HNS群)と、2010年1月1日~14年12月31日にPAP療法を受けた患者(PAP群)のデータ(電子カルテまたはADHERE registry)を使用。2020年3月26日~21年9月9日まで解析を行う、後ろ向きコホート研究を実施した。

 対象は無呼吸低呼吸指数(AHI)が15〜65、連続PAPで改善が見られない、22歳以上などの条件を満たしたOSA患者。年齢、BMI、性、AHIに基づき、greedy nearest-neighbor法を用いてPAP群とHNS群を3:1でマッチングした。その上で、HNS群85例〔平均年齢62.8歳±標準偏差(SD)9.5歳、男性59例(69.4%)、白人77例(90.6%)、平均BMI 28.8±SD3.1〕と、PAP群217例〔同62.1歳、9.9歳、157例(72.4%)、173例(81.2%)、29.5±3.1〕を比較した。

 AHI、エプワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale;ESS)、睡眠質問票(Functional Outcomes of Sleep Questionnaire;FOSQ)、不眠重症度(Insomnia Severity Index;ISI)、うつ病重症度(Patient Health Questionnaire-9;PHQ-9)の各スコアを収集し、線形混合効果モデルを用いて、ベースラインから1カ月後、3カ月後、6カ月後、1年後、2年後までの変化を検定した(2年後のエンドポイントは数が少ないため報告されていない)。

HNS群はPAP群よりPHQ-9が1.48ポイント低下し有意に改善

 PAP群の追跡期間中央値が3.83カ月〔四分位範囲(IQR)2.33〜6.27カ月〕であったため、HNS群の3カ月後の追跡結果をPAP群の比較対象として用いた。共変量を調整した結果、PAP群に比べてHNS群ではPHQ-9が1.48ポイント低下し(最小二乗平均値-4.06ポイント、95%CI -5.34〜-2.79ポイント vs. 同-2.58ポイント、-3.35〜-1.82ポイント)、有意な改善が見られた。

 ESS(最小二乗平均値-2.83、95%CI -3.83〜-1.82 vs. 同-2.88、-3.56〜-2.20)、FOSQ(同1.84、1.21〜2.48 vs. 1.38、1.00〜1.75)、ISI(同-4.45、-6.27〜-2.64 vs. -3.68、-4.77〜-2.59)のスコアは両群で同等の改善が見られた。

 臨床的に重要なスコアの改善が見られた割合は、ESSスコアではHNS群65例中42例(64.6%) vs. PAP群217例中118例(54.5%)、FOSQスコアではHNS群49例中29例(59.2%) vs. PAP群217例中67例(30.9%)、PHQ-9スコアでは、HNS群48例中14例(29.2%) vs. PAP群217例中53例(24.4%)、ISIスコアでは、HNS群49例中23例(46.9%) vs. PAP群217例中79例(36.4%)であった。

 一方、HNS群におけるHNS施行後1カ月のPROsは、ESSでは48例中34例(70.8%)、FOSQでは35例中21例(60.0%)、PHQ-9では33例中11例(33.3%)、ISIでは34例中15例(44.1%)に有意な改善が認められた。これらの改善は3カ月後も維持された。

 HNS施行後1年のPROsについても、ESSでは28例中17例(60.7%)、FOSQでは20例中11例(55.0%)、PHQ-9では23例中7例(30.4%)、ISIでは25例中11例(44.0%)に有意な改善が認められた。

 以上から、HNS施行1年後にPROsの持続的な改善が見られ、3カ月後にはPAP療法と同等の改善効果が得られた。今回の結果について、Pascoe氏は「HNSがOSA患者の不眠症とうつ病を改善するための有効な治療法であることを示唆しており、HNSの適応拡大と有用性に関する重要な洞察を与えてくれる」と述べている。

(今手麻衣)