厚生労働省の専門部会が11月12日に、長年にわたる接種の積極的勧奨の差し控えを終了する意向を示したことで、にわかに注目が集まっているヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン。昨年(2020年)12月には、4価ワクチンの男性への任意接種が承認された。米・Icahn School of Medicine at Mount SinaiのStephen E. Goldstone氏らは、男性を対象に4価HPVワクチンの有効性、安全性を検討する第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(第Ⅲ相試験)の非盲検延長試験を実施。その結果、HPV6/11/16/18型に関連する性器および肛門疾患に対し、キャッチアップ接種を含めた同ワクチンの長期的な有効性および安全性が示されたと、Lancet Infect Dis2021年11月12日オンライン版)に発表した。

1,873例を7年間の延長試験に組み入れ

 これまでに、16〜26歳の男性を対象とした第Ⅲ相試験で、4価HPVワクチンがHPV6/11/16/18型に関連する性器および肛門疾患の発症を抑制することが報告されている。Goldstone氏らは今回、同試験の延長試験を実施。合計10年間の追跡により、HPV6/11型に関連する尖圭コンジローマ、HPV6/11/16/18型に関連する陰茎がん、肛門がんおよびその前駆病変の発症に対する4価HPVワクチン接種の有効性および安全性を検討した。

 第Ⅲ相試験は、18カ国71施設が参加した国際共同多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験で、追跡期間は3年間だった。対象は、異性と性交渉を持つ16〜23歳の男性および同性と性交渉を持つ16~26歳の男性(MSM)。4価HPVワクチンまたはプラセボを接種する群に1:1でランダムに割り付け、1日目、2カ月目、6カ月目に0.5mLを上腕の三角筋部に筋肉内注射した。登録時に肛門部尖圭コンジローマ、HPV以外の性感染症による性器病変を有する者、それらの既往がある者は除外した。

 第Ⅲ相試験に引き続き、7年間の非盲検延長試験を実施。16カ国46施設で2010年8月10日~17年4月3日に登録した1,803例を延長試験に組み入れた。第Ⅲ相試験で4価HPVワクチン群に割り付けられ、1回以上ワクチン接種を受けた936例(MSM 109例)を早期ワクチン接種群、第Ⅲ相試験でプラセボ群に割り付けられ、第Ⅲ相試験後にワクチン接種を受けた867例(MSM 128例)をキャッチアップ接種群とした。

 主要評価項目は、HPV6/11型に関連する尖圭コンジローマ、HPV6/11/16/18型に関連する陰茎がんの罹患率、MSMに限定したHPV6/11/16/18型に関連する肛門がんおよび肛門上皮内腫瘍(肛門部尖圭コンジローマおよび扁平上皮がん)の罹患率とした。

 4価HPVワクチン3回目接種後の追跡期間(中央値)は、早期ワクチン接種群で9.5年(範囲0.1~11.5年)、キャッチアップ接種群で4.7年(同0.0~6.6年)だった。

MSM限定の早期ワクチン接種群における肛門がんの罹患率が低下

 早期ワクチン接種の有効性を検討したところ、HPV6/11型に関連する尖圭コンジローマの罹患率は、第Ⅲ相試験のプラセボ群の137.3/1万人・年(95%CI 83.9~212.1/1万人・年)に対し、早期ワクチン接種群では0.0/1万人・年(同0.0~8.7/1万人・年)だった。同様に、HPV6/11/16/18型に関連する陰茎がんの罹患率は、それぞれ140.4/1万人・年(95%CI 89.0~210.7/1万人・年)、0.0/1万人・年(同0.0~7.7/1万人・年)だった。

 MSMに限定したHPV6/11/16/18型に関連する肛門がんおよび肛門上皮内腫瘍の罹患率は、第Ⅲ相試験のプラセボ群が906.2/1万人・年(95%CI 553.5~1,399.5/1万人・年)、早期ワクチン接種群が20.5/1万人・年(同0.5~114.4/1万人・年)だった。

キャッチアップ接種後の尖圭コンジローマ、陰茎がんの新規発症は0例/1万人・年

 次に、キャッチアップ接種の有効性を検討した。HPV6/11型に関連する尖圭コンジローマの新規発症例は、第Ⅲ相試験期間中のキャッチアップ接種群(4価HPVワクチン未接種)の149.6例/1万人・年(95%CI 101.6~212.3例/1万人・年)に対し、延長試験期間中の同群(キャッチアップ接種済)では0例/1万人・年(同0.0~13.5例/1万人・年)だった。

 同様に、HPV6/11/16/18型に関連する陰茎がん新規発症例の報告もなかった〔第Ⅲ相試験期間中:155.1例/1万人・年(95%CI 108.0~215.7例/1万人・年)、延長試験期間中:0例/1万人・年(同0.0~10.2例/1万人・年)〕。

 さらに、MSMに限定したHPV6/11/16/18型に関連する肛門がんおよび肛門上皮内腫瘍の新規発症例は、延長試験期間中で低かった〔第Ⅲ相試験期間中:886.0例/1万人・年(95%CI 583.9~1,289.1例/1万人・年)、延長試験期間中:101.3例/1万人・年(同32.9~236.3例/1万人・年)〕。

 ワクチン接種に関連する重篤な有害事象は報告されなかった。

 以上から、Goldstone氏らは「4価HPVワクチンは、HPV6/11/16/18型に関連する肛門および性器疾患の発症を長期的に抑制。キャッチアップ接種を含め、男性への4価HPVワクチン接種は有効な戦略だ」と結論している。

(比企野綾子)