Blood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration(BPLTTC)に参加する英・University of OxfordのMilad Nazarzadeh氏らは、BPLTTCのデータセットから選択したランダム化比較試験(RCT)19件、14万例超の個人レベルのデータ(IPD)に基づくメタ解析で主要な降圧薬5種類による2型糖尿病の予防効果を検証。その結果、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が2型糖尿病の新規発症リスクを低下させた一方で、β遮断薬とサイアザイド系利尿薬はリスクを上昇させ、カルシウム(Ca)拮抗薬ではリスクへの影響が認められなかったとLancet2021; 398: 1803-10)に発表した。

収縮期血圧5mmHg低下で新規発症リスクが11%低下

 降圧薬や生活習慣の改善による血圧低下は、糖尿病患者における血管合併症の確立された予防方法だが、糖尿病自体の発症予防における役割はよく分かっていない。
 そこでNazarzadeh氏らは、BPLTTCのデータセットから追跡期間が1,000人・年以上で、降圧薬とプラセボまたは異なる降圧薬間で2型糖尿病の予防効果を比較したRCT 19件(14万5,939例)を抽出。層別化Cox比例ハザードモデルによるIPDに基づく一段階メタ解析に組み入れ、2型糖尿病の新規発症リスクに対する血圧低下の影響を検討した。

 プラセボ対照試験の場合はプラセボ群、異なる降圧薬の比較試験の場合は収縮期血圧(SBP)の低下幅が小さい群を対照群とし、それぞれ他方を治療群とした。

 解析の結果、中央値4.5年(四分位範囲2.0年)の追跡期間中に9,883例が新規発症の2型糖尿病と診断されていた。発症率(1,000人・年当たり)は、対照群の16.44(95%CI 16.01~16.87)に対し、治療群では15.94(同15.47~16.42)だった。SBP 5mmHg低下により2型糖尿病の新規発症リスクが11%低下することが示された(ハザード比0.89、95%CI 0.84~0.95)。

リスクはACE阻害薬とARBで16%低下、β遮断薬で48%、利尿薬で20%上昇

 次に、糖尿病の発症時期に関する情報が欠落していたRCT 3件を加えた22件(16万7,107例)をロジスティック回帰モデルによるIPDデータに基づくネットワークメタ解析に組み入れ、降圧薬の種類による効果を比較した。

 その結果、プラセボ群と比較した2型糖尿病の新規発症リスクは、ACE阻害薬〔相対リスク(RR)0.84、95%CI 0.76~0.93〕とARB(同0.84、0.76~0.92)で有意に低下した一方、β遮断薬(同1.48、1.27~1.72)とサイアザイド系利尿薬(同1.20、1.07~1.35)では有意に上昇した。一方、Ca拮抗薬(同1.02、0.92~1.13)では、2型糖尿病の新規発症リスクに対する実質的な影響が認められなかった。

降圧以外の作用も糖尿病リスクに関連の可能性

 以上を踏まえ、Nazarzadeh氏らは「降圧薬投与によって2型糖尿病の新規発症を予防できる可能性を示すエビデンスが得られた。特に、ACE阻害薬とARBは糖尿病リスクが懸念される患者に最も良好な転帰をもたらす降圧薬と見なすべきである」と結論。「本来の降圧作用の他にも、降圧薬の種類によって異なるさまざまな作用機序が糖尿病リスクに影響を及ぼす可能性がある」と付言している。

 さらに、「血圧上昇が2型糖尿病の新規発症を引き起こす正確なメカニズムは不明」とした上で、「糖尿病の症状に先行して発現する傾向があるインスリン抵抗性、血管の炎症、血管内皮機能障害は、全て高血圧が病態生理学的な原因となって生じる。例えば、インスリン抵抗性は代謝系と心血管系の反応経路のクロストークにおいて中心的な役割を果たす可能性がある。また、交感神経系の活性化や慢性炎症による血管内皮機能障害なども、高血圧と糖尿病リスクを関連付ける因子であることが示唆されている」と指摘。「これらの媒介因子に対する作用は降圧薬の種類によって異なる」と述べている。

 同氏らによると、ACE阻害薬やARBといったレニン・アンジオテンシン系阻害薬では、降圧作用とは無関係に炎症マーカー値を低下させて糖尿病の予防効果を高める可能性や、活性酸素種の抑制によりインスリン抵抗性を改善する可能性が示されているという。一方、「β遮断薬ではインスリン産生と糖代謝の変化、サイアザイド系利尿薬ではカリウム欠乏が糖尿病リスクに関連している可能性がある」と付言している。

(太田敦子)