2013年から中止されていたヒトパピローマウイルス(HPV)感染症を予防するワクチンの積極的勧奨が、来春から再開される。接種を促す個別通知などで接種率が向上すれば、子宮頸(けい)がんの発生率低下につながることが期待される。HPVに感染、子宮頸がんを発症し手術した女性が取材に応じ、「海外では接種が当たり前。(病気もワクチンも)身近に感じてほしい」と語った。
 東京都墨田区に住む会社員女性(35)は2018年7月、下着に付いた米粒ほどの血痕を見つけた。生理ではない。「よくあることだ」と思ったが、知人から「上司が子宮頸がんで亡くなった」と聞いたことがあり、念のためHPV検査を受けてみた。結果は陽性だった。
 その後の詳しい検査で子宮頸がんの発症が確認された。医師からは「放っておいたら死にます」と告げられ、手術を選択した。女性は「子宮全摘出もよぎった」と振り返る。
 HPVは主に性行為で感染するため、友人男性から心ない言葉を掛けられたこともあった。偏見を恐れ、会社には手術前、「遠い山でキャンプをする」と伝えて有給休暇を取った。万一に備え、仲の良い女性の同僚にだけ事実を伝えて手術に臨んだ。手術の結果が分かるまでの2週間は、生きた心地がしなかったという。
 除去したのは子宮頸部の一部にとどまり、子宮は温存された。女性は手術後、定期接種の対象年齢を過ぎていたため自費でHPVワクチンを打った。効果の高いワクチンは3回の接種で約10万円掛かる。副反応の恐れも報じられていたが、「再発におびえて暮らしたくない」と考え、海外の研究結果なども調べて決めた。接種を受けた病院では、外国人女性が頻繁に受けに来ていると聞かされた。
 女性は「子宮頸がんは症状が出にくく、わずかな身体の変化を見逃しやすい。周囲に明かさない人もいる。知らないだけ、言わないだけで、潜在的な患者はたくさんいる」と危ぶむ。検査は数千円から受けられると指摘し、「気軽に検査に行ってほしい」と訴えている。 (C)時事通信社