新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では血栓症の合併リスクが高いことが報告され、有効な治療薬の開発および探索が続いている。英・Randomised Evaluation of COVID-19 Therapy(RECOVERY)Collaborative Groupは、COVID-19の入院患者を対象にアスピリンの有効性および安全性を検証する大規模非盲検ランダム化比較試験(RCT)を実施。その結果、標準治療にアスピリンを併用しても、28日後の全死亡率は低下しなかったと、Lancet2021年11月17日オンライン版)に発表した。

標準治療群7, 541例、アスピリン群7,351例で検討

 今回の非盲検RCTは、英・University of Oxfordが牽引するCOVID-19治療薬候補の有効性検証を目的としたRECOVERYの一環として行われた。抗血小板作用を有するアスピリンは、COVID-19への有効性が期待される候補薬の1つである。

 対象は、2020年11月1日~21年3月21日に3カ国181施設(英国177施設、インドネシア2施設、ネパール2施設)で登録したCOVID-19入院患者1万4,892例〔平均年齢59.2±14.2歳、症状発現からの期間中央値9日(四分位範囲6~12日)〕。標準治療のみを行う標準治療群(7,541例)と退院までアスピリン150mg/日を併用するアスピリン群(7,351例)に1:1でランダムに割り付けた。

 主要評価項目は、治療開始から28日後の全死亡率。副次評価項目は、入院期間、治療開始時点で侵襲的人工呼吸管理が不要だった患者における侵襲的人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)の使用または死亡の複合とした。

入院期間は、標準治療群で9日、アスピリン群で8日と僅差

 解析の結果、治療開始28日後の全死亡率は、標準治療群の17.2%(1,299/7, 541例)に対しアスピリン群は16.6%(1,222/7,351例)と、有意な低下が認められなかった〔率比(RR)0.96、95%CI 0.89~1.04、P=0.35〕。

 副次評価項目の検討では、入院期間中央値は標準治療群の9日(四分位範囲5~28日超)に対し、アスピリン群では8日(同5~28日超)。28日以内の退院率は標準治療群の74%に対し、アスピリン群では75%と有意に高かった〔RR 1.06、95%CI 1.02~1.10、P=0.0062〕。

 治療開始時点で侵襲的人工呼吸管理が不要だった患者における侵襲的人工呼吸器やECMOの使用または死亡の複合エンドポイントを満たす割合は、標準治療群で21.9%、アスピリン群で21.1%と有意差は認められなかった(RR 0.96、95%CI 0.90~1.03、P=0.23)。

 安全性については、血栓症の発症率は標準治療群(5.3%)に対しアスピリン群(4.6%)で低い傾向にあった〔RR 0.88、95CI 0.76~1.01、P=0.07、絶対差-0.6%±標準誤差(SE)0.4%〕。一方、主要な出血性イベントの発生率は、標準治療群(1.0%)に対しアスピリン群(1.6%)で有意に高かった(同1.55、1.16~2.07、P=0.0028、0.6%±SE 0.2%)。

 研究グループは「COVID-19入院患者にアスピリンを併用しても、28日後の全死亡率は低下しなかった。また、侵襲的人工呼吸器の使用や死亡に至るリスクの低減も示されなかった。さらに、28日以内の退院率は微増にとどまった」と考察。「COVID-19の治療において、入院患者へのアスピリン投与は支持されない」と結論している。

(比企野綾子)