オランダ・Maastricht UniversityのFrank C. T. van der Heide氏らは、同国の約5,000例を対象にした前向き住民コホート研究で、脳神経変性の指標である網膜神経線維層(RNFL)厚とうつ病リスクの関連を検討。その結果、RNFL厚が薄い者ほど抑うつ症状の発現リスクが高く、網膜神経変性のモニタリングにより老年期うつ病のリスク保有者を特定できる可能性が示されたとJAMA Netw Open2021; 4: e2134753)に発表した。

厚さ10.9μm減少で新規発症リスク11%上昇

 解析対象は、オランダのコホート研究Maastricht Study参加者のうち、光干渉断層計(OCT)で測定したRNFL厚およびうつ病スクリーニング質問票Patient Health Questionnaire(PHQ)-9のスコア(範囲0~27)が得られた4,934例〔平均年齢59.7歳±標準偏差(SD)8.4歳、女性50.8%、2型糖尿病患者20.5%〕。ベースライン時のPHQ-9スコアが10以上の者は除外した。主要評価項目は、①臨床的に重要な抑うつ症状(PHQ-9スコア10以上)の新規発現、②一定期間におけるなんらかの抑うつ症状(PHQ-9スコア0~27)の発現-とした。中央値5.0年(四分位範囲3.0~6.0年)の追跡期間中に、臨床的に重要な抑うつ症状の新規発現は445例であった。

 年齢、性、糖尿病の有無、教育水準、ウエスト周囲長、総コレステロール/HDLコレステロール比、脂質低下薬および降圧薬の使用の有無、収縮期血圧、喫煙歴、飲酒量、配偶者の有無を調整して解析した。その結果、RNFL厚の減少に伴い、臨床的に重要な抑うつ症状(PHQ-9スコア10以上)の新規発現〔1SD(10.9μmに相当)減少当たりのハザード比1.11、95%CI 1.01~1.23、P<0.05〕、なんらかの抑うつ症状(PHQ-9スコア0~27)の発症〔1SD(11.0μmに相当)減少当たりの発現率比1.04、95%CI 1.01~1.06、P<0.05〕のリスクがいずれも有意に上昇していた。

網膜神経変性が老年期うつ病の予測因子に

 以上を踏まえ、van der Heide氏らは「RNFL厚の減少に伴い、臨床的に重要な抑うつ症状の発現率が上昇し、一定期間における抑うつ症状が増加することが示された。したがって、網膜神経変性のモニタリングは老年期うつ病のリスク保有者を特定する手段になると考えられる」と結論している。

 さらに、同氏は神経変性の原因として慢性的なストレス、微小血管機能障害、アミロイド沈着、高血糖などを挙げ、「慢性的なストレス状態は、グルココルチコイド値を上昇させて神経変性を誘発する恐れがある。微小血管機能障害とアミロイド沈着は、ともに血流の自動調節機能を低下させる一因であると想定されており、虚血や神経炎症の亢進を招く可能性がある。網膜および脳の神経細胞はエネルギー需要が高く、微小血管による連続的な栄養素の供給に完全に依存しているため、虚血の影響を受けやすい。アミロイド沈着と高血糖は神経毒性を有すると考えられ、神経変性につながりうる」と説明している。

(太田敦子)