岸田文雄首相が新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」をめぐり、全世界を対象に外国人入国を原則停止すると表明し、迅速な対応をアピールした。意識したのは「後手」に回ったとたびたび批判された菅前政権の教訓。ただ、イベントや飲食など国内の行動制限は緩めたままで、未知の変異株による感染拡大を抑えられるか不透明だ。
 ◇非常事態宣言
 「まだ状況が分からないのに岸田は(オミクロン株に対して)慎重すぎるという批判は、私が全て負う覚悟だ」
 首相は29日、今月8日から実施してきたビジネス目的の入国者らへの水際緩和策を停止する方針を示し、記者団にこう強調。日本人帰国者らに関しても「厳格な隔離措置を取る」と明言した。
 菅義偉前首相は、感染拡大への甘い見通しが医療提供体制の逼迫(ひっぱく)を招いたと指摘され、内閣支持率を落としていった。
 関係省庁の幹部は今回の対応について、欧州やオーストラリアで新変異株の感染例が報じられた28日に首相サイドから指示が下りたと明かし、「緊張感の高さが岸田流だ」と解説。自民党中堅は「安倍晋三元首相や菅氏より動きが早い」と評価した。
 例外として入国が認められるのは「人道的な配慮が必要な場合」など。外務省幹部は厳しい措置を取るイスラエルと同様の対応だと説明し、「事実上の水際非常事態宣言だ」と語った。
 ◇かく乱要素
 政府は19日、コロナ対策の基本的対処方針改定版と経済対策をまとめ、コロナ禍で傷んだ経済の再生にかじを切った。飲食店の営業や酒類提供、イベント開催などに関する制約は相当程度撤廃された。観光支援事業「Go To トラベル」も再開する予定だ。
 首相は29日の政府・与党連絡会議で「感染状況を十分に見極めながら、通常に近い経済・社会活動を取り戻していきたい」と重ねて表明。記者団には、日本のワクチン接種率は先進7カ国(G7)で最も高いなどとして「リスクへの耐性は各国以上に強い」と訴えた。
 だが、オミクロン株に対しては「入って来ないわけがない」(自民党ベテラン)と厳しい見方が広がる。26日に真っ先に入国制限の対象に指定されたナミビアに滞在していた男性1人が新型コロナに感染していることが分かり、オミクロン株かどうかの解析が始まった。
 自民党外交部会長の佐藤正久参院議員は29日の党会合で、外国人入国の原則停止について「まだまだ詰めが甘い」と述べ、例外を認める際も厳格に審査するよう求めた。
 オミクロン株の特徴や既存ワクチンの有効性は未確認。政府関係者は再び行動制限措置を講じる事態もあり得るとして「オミクロンが経済のかく乱要素になる」と警戒をあらわにした。 (C)時事通信社