超高齢化が進む日本は、心不全患者が急増する「心不全パンデミック」状態にある。新潟大学大学院循環器内科学分野の藤木伸也氏、教授の猪又孝元氏らは、心不全患者の要介護リスクを検討。その結果、高齢心不全患者が将来的に介護を要するリスクは一般高齢者の1.47倍と極めて高く、心房細動、骨粗鬆症や認知症などの併存疾患、睡眠薬の服用などが介護発生率上昇の独立した危険因子であることが示されたと、Circ J2021年11月16日オンライン版)に発表した。

介護発生率は100人・年当たり一般4.0人 vs. 心不全10.7人

 心不全は5年死亡率が50%以上と極めて予後不良である。日本では、心不全を含む循環器疾患が主要な死因であるばかりでなく、要介護に至る原因の1つにもなっている。しかし、心不全患者が介護に至る頻度や危険因子については明らかにされていない。そこで猪又氏らは今回、心不全患者の介護リスクを把握するため、高齢心不全患者における介護保険の申請状況を一般高齢者と比較した。

 対象は、2011年1月~16年12月に新潟市内の総合病院7施設(新潟大学医歯学総合病院、新潟市民病院、新潟県立がんセンター新潟病院、新潟南病院、新潟万代病院、桑名病院、聖園病院)で心エコー検査を受け、左室駆出率(LVEF)が50%以下だった65歳以上の心不全患者のうち、介護保険未申請の1,852例〔平均年齢75.8歳、男性1,318例、女性534例、LVEF中央値43.0%(35.7~47.0%)、虚血性心疾患あり921例(49.7%)〕。一般高齢者は、同時期に新潟市内在住の65歳以上の11万3,038例とし、新潟市役所に保管されているデータから介護保険に関する情報を収集した。

 解析の結果、平均1.7年間の調査期間中に介護保険を申請した心不全患者は332例だった。100人・年当たりの介護発生率は、一般高齢者の4.0に対し、心不全患者では10.7と2倍超に達し、ハザード比(HR)は1.47(95%CI 1.32~1.64、P<0.001)だった。

心房細動、脳卒中の既往、骨粗鬆症、認知症も独立した危険因子

 多変量解析を行ったところ、介護発生の独立した危険因子として、心房細動(HR 1.588、95%CI 1.279~1.971)、脳卒中の既往(同2.02、1.583~2.576)、骨粗鬆症の併存(同1.738、1.253~2.410)、認知症の併存(同2.804、2.075~3.789)、睡眠薬の服用(同1.461、1.148~1.859)、利尿薬の服用(HR 1.417、1.132~1.773)などが抽出された。

 猪又氏らは「高齢の心不全患者は一般高齢者に比べ要介護に至るリスクが1.47倍と有意に高く、予防が重要であることが示された」と結論。「介護リスクを正確に把握し、循環器疾患の治療からリハビリテーションに至るまで、網羅的かつ全人的な医療を提供できる体制を整え、健康寿命の延伸につなげる必要がある」と述べている。

(比企野綾子)