米・メルクと米・ベンチャー企業リッジバック・バイオセラピューティクスは11月30日、共同で開発を進めてきた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する経口抗ウイルス薬molnupiravirについて、米食品医薬品局(FDA)の抗菌薬諮問委員会で審議され、重症化リスクの高い患者への緊急使用の承認が勧告されたと発表。既に英国では11月初めに同薬の緊急使用を承認されており、米国で承認されればCOVID-19に対する初の経口薬になる。両社は「molnupiravirは他剤との併用や食事に関する制限などが必要ない単剤治療として開発され、新たな変異株に対しても従来株と同様の活性を持つ」と同薬の有用性を強調した。

入院・死亡のリスク低減率は30%、中間解析結果を下回る

 同薬については、11月26日に発表された同薬の第Ⅲ相試験の最終試験結果で、入院または死亡のリスク低減率は30%だったことが報告され、中間解析の結果から18ポイント下回ったことから承認への影響が注目されていた。FDAの抗菌薬諮問員会で行われた委員による投票結果は賛成13人、反対10人となり、賛成が反対を上回り推奨が決定された。FDAはこれを踏まえて承認を最終判断する。

 molnupiravirは米・エモリ―大学が100%出資するベンチャー企業が発見し、メルクとリッジバック・バイオセラピューティクスが同大学から開発の権利を取得した。同薬はCOVID-19を引き起こす新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の複製を阻害して増殖を防ぐ効果が期待される。現在、COVID-19の治療で使用されている抗体カクテル療法や抗体医薬が注射薬であるのに対し、molnupiravirは経口投与のため簡便で使いやすいという利点がある。

 ただ、同薬の第Ⅲ相試験における対象は「発症から5日以内の軽症または中等症患者」かつ「少なくとも1つ以上の重症化リスクを有する者」に限定されており、承認されても投与対象が制限される可能性が高い。

 11月26日にメルクが発表した最終解析結果(追加解析)結果によると、入院または死亡の発生率はプラセボ群の9.7%(699例中68例)に対しmolnupiravir群では6.8%(709例中48例)、絶対リスク減少率(ARR)は3.0%(95%CI 0.1~5.9、名目上のP値=0.0218)、相対リスク減少率(RRR)は30%(同0.49~0.99)であった。死亡例はプラセボ群で9例、molnupiravir群では1例報告された。有害事象プロファイルは中間解析の報告と一貫していた。

 なお、10月に発表された中間解析結果では、入院または死亡の発生率はプラセボ群の14.1%(377例中53例)に対し、molnupiravir群では7.3%(385例中28例)だった。ARRは6.8%(95% CI 2.4~11.3、P値=0.0012)、RRRは48%(同:0.33~0.80)と、今回より18%ポイント高かった。

ファイザーが開発中の経口薬、9割の低減効果示す

 メルクは11月30日付の声明で、「molnupiravirの有効性は、デルタ株、ガンマ株、ミュー株といったSARS-CoV-2変異株などの重要な患者サブグループ間で一貫していた」と強調した。molnupiravirは英国で11月4日に緊急使用が承認され、日本政府も国内での承認後に約160万回分の供給を受けることをMSDと合意している。

 COVID-19の経口薬をめぐっては開発競争が激化しており、ファイザーが開発中の抗ウイルス薬paxlovidの第Ⅱ/Ⅲ相試験の中間解析結果では、非投与群に比べ入院または死亡リスクが89%低減したという極めて高い有効性が示されている(関連記事「ファイザーのコロナ経口薬、高い有効性示す」「米当局にコロナ飲み薬使用申請 重症化リスク89%減」)。

(小沼紀子)