変形性膝関節症(膝OA)に対する治療として、欧米を中心に多血小板血漿(PRP)療法が普及し、わが国でも自由診療下で行われているが、作用メカニズムは十分解明されていない。オーストラリア・University of MelbourneのKim L. Bennell氏らは、膝OAに対するPRP療法の有効性を検討するプラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)RESTOREを実施。プラセボ群と比べ、PRP療法群では膝OAの疼痛スコアや関節構造に有意な改善が認められなかった。結果の詳報はJAMA2021; 326: 2021-2030)に掲載された。

OAガイドラインのエビデンスレベルは低い位置付け

 PRPとは、採取した患者の血液から血漿や血小板を抽出して濃縮した後、関節に直接注入する再生医療の一種である。成長因子およびサイトカインなどを多く含んでおり、変形性関節症(OA)の病因や症状に好影響を及ぼす可能性があるとされている(Arthroscopy 2019; 35: 961-976.e3)。

 米国リウマチ学会(ACR)を含むOAの診療ガイドラインでは、エビデンスレベルが極めて低いことから現時点でPRP療法を推奨していない。

 Bennell氏らは今回、疼痛症状〔Kellgren and Lawrence(K-L)分類グレード2~3〕を有しX線で軽度~中等度の膝OAと判定された患者2,284例のうち、適合基準を満たした288例を、PRP療法群(144例:平均年齢62.2歳、女性59.0%、平均BMI 29.0)と生理食塩水を膝関節内に投与するプラセボ群(144例:同61.6歳、58.3%、29.6)にランダムに割り付け、膝関節痛に対する有効性を検討した。

 主要評価項目は、11段階で評価する疼痛スコア(範囲0~10点、スコアが高いほど疼痛が強い)における12カ月後のベースラインからの変化および、MRIに基づく脛骨内側の軟骨定量評価とした。 副次評価項目は、事前に規定した自己申告による自覚症状〔疼痛および機能の全般的改善に加えて、歩行時の膝疼痛、間欠的疼痛、持続的疼痛など〕の改善とした。

ほとんどの副次評価項目も有意差なし

 解析の結果、投与12カ月後における疼痛スコアのベースラインからの変化は、プラセボ群の-1.8点(5.7点→3.9点)に対しPRP療法群では-2.1点(5.7点→3.5点)と、有意差は認められなかった(平均群間差-0.4点、95%CI -0.9~0.2点、P=0.17)。

 さらにMRIに基づく脛骨内側の軟骨定量評価は、プラセボ群の-1.2%に対しPRP療法群では-1.4%と、関節構造にも有意差はなかった(平均群間差-0.2%、95%CI-1.9~1.5%、P=0.81)。

 副次評価項目を見ると、投与2カ月後の全般的評価の改善については、プラセボ群の36.2%に対しPRP療法群では48.2%と有意に高かった〔リスク比(RR)1.37、95%CI 1.05~1.80、P=0.021〕。しかし、その他の副次評価項目に有意差はなかった。

「PRP療法の施行は支持できない」

 今回の結果は、患者の肥満度、膝関節液の有無、K-L分類などにかかわらず一貫していた。

 以上の結果を踏まえ、Bennell氏らは「膝OAに対するPRP療法の治療費は、1回当たり平均2,032米ドル(約23万円、Orthop J Sports Med 2020; 8: 2325967119900811)と報告されており、施行は支持されない」と結論している。

 なお、膝OAに対するPRP療法の有効性を検討したRCT5件のシステマチックレビューとメタ解析(Biomed Res Int 2021; 2021: 2191926)では、プラセボ群に比べ有意な改善効果が報告されている。この点について同氏らは、PRPの調製法や注入法、評価法、対象患者の特性などの相違、およびバイアスリスクに影響を及ぼしうるデザイン上の問題が考えられるとしている。

 いずれにせよ「今回、主要評価項目においてプラセボ群とPRP療法群で有意差が認められなかったのは、PRP療法には膝OAの進展遅延効果がないことを示しており、仮説検定における第二種過誤(type Ⅱ error:ぼんやり者の誤り)であるとは考えにくい」と指摘している。

(田上玲子)