新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の発生を受け、日本着の国際線の新規予約を停止するよう航空会社に要請していた岸田政権が、わずか3日で撤回に追い込まれた。「朝令暮改」の背景には首相官邸と国土交通省による事前の調整が不十分だったことがある。
 2日朝から、官邸の動きは慌ただしかった。岸田文雄首相は首相官邸に到着すると、すぐに記者団の取材に応じ、「混乱を招いてしまった。国交省に邦人の帰国需要に十分に配慮するよう指示した」と説明。その1時間後、松野博一官房長官は記者会見で要請取りやめを発表した。
 国交省による要請の事実が報じられた1日午後以降、国際線の予約を一律停止すれば日本人の帰国すら難しくなるとの批判が国内に広がり、「完全に憲法違反」(橋下徹元大阪市長)との声も上がっていた。官邸は、放置すれば政権への批判が強まりかねないと危機感を募らせたようだ。
 もっとも、官邸は新規予約停止の重大性を当初から認識していたわけではない。松野長官は1日午後の会見で、要請について問われたが「のちほど整理して返事したい」などの答弁に終始。官邸幹部は1日夜の時点で「日本人は帰国できるはずだ」と話し、要請内容を正確に把握していなかったことをうかがわせた。
 国交省の対応も十分ではなかったようだ。政府は先月29日、一日当たりの入国者数の上限を3500人に引き下げると発表。国交省はこの基準をクリアするため、日本到着便の予約停止を要請した。その際、「日常的な業務の一環」(同省関係者)ととらえ、官邸に特別な相談はしなかったという。
 外務省関係者は「政府は外国人の入国を原則停止しており、自然体でも入国者数は減るのに、強い対応を取り過ぎた」と指摘した。
 松野長官は2日午後の会見で、要請について「私には(1日夕の)タスクフォースで、首相には1日夜に事後報告があった。今後は事前にしっかりと相談があると考えている」と述べ、混乱の責任は国交省にあるとの立場をにじませた。ただ、「29日の段階で官邸に情報は入っていた」(官邸関係者)との証言もあり、官邸への批判は続きそうだ。 (C)時事通信社