人の受精卵が分裂して成長した胚盤胞が子宮内膜に着床する過程を、人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを利用して模倣し、実験容器内でほぼ再現できたと、オーストリア科学アカデミー分子生物工学研究所(IMBA)などの研究チームが発表した。「生殖補助医療(不妊治療)の成功率を高める物質を発見する一方、副作用の少ない避妊薬の開発につながる物質も見つけた」という。論文は3日、英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。
 この実験は、多様な細胞に変わるiPS細胞や胚性幹細胞(ES細胞)の培養方法を工夫し、「ブラストイド」と呼ばれる疑似胚盤胞を生み出す技術と、女性患者から同意を得て採取した子宮内膜を実験容器内で長期間培養する技術を組み合わせ、改良して行われた。人のブラストイド作製は今年3月、米テキサス大とオーストラリア・モナシュ大の二つの研究チームが成功したと発表。子宮内膜の培養法はベルギーのルーベン・カトリック大チームが2017年に発表している。
 受精から5~7日目の胚盤胞が子宮内膜に着床する過程は、妊娠が成立するかどうかの大事なポイントだが、着床できなかった場合に原因を体内で直接調べることはできない。このため実験容器内で模擬して解明する技術が求められるが、本物の精子と卵子による受精卵を実験に使うのは生命倫理に反するとの意見がある。
 IMBAのニコラス・リブロン博士らはブラストイドの実験で、「LPA」と呼ばれる物質を培養液に加えると胚盤胞の成長を促すとみられることを発見。一方で、「SC144」と呼ばれる物質が着床を妨げることが分かり、新たな避妊薬の開発に役立つと指摘した。ブラストイドの「着床」後の成長は、本物の胚盤胞とは違ったという。 (C)時事通信社