全身の細胞でエネルギーを生み出す小器官ミトコンドリアの異常により、脳や心臓、筋肉などのさまざまな機能が低下する国指定の難病「ミトコンドリア病」について、東北大大学院医学系研究科の阿部高明教授らは6日、治療薬候補物質「MA―5」の臨床試験(治験)を来年1月に始めると発表した。エネルギー生産効率を高める働きがあり、実用化されれば画期的な新薬になると期待される。
 MA―5は腎臓病患者の血液から発見された物質に基づき、2015年に開発された。ミトコンドリア内部のたんぱく質「ミトフィリン」に結合し、エネルギー物質「アデノシン三リン酸(ATP)」の合成酵素と複合体を形成して生産効率を高める。ミトコンドリア遺伝子に異常があるマウスに投与すると、心臓や腎臓の機能を改善する効果があったほか、ミトコンドリア病患者から採取した皮膚細胞を培養する実験ではATPが増え、細胞生存率が高まった。
 治験はまず日本人の健康な成人男性56人を対象とし、約2年間で飲み薬としての安全性を確認するほか、飲んでから血液を通じて多様な臓器に運ばれ、尿などに排出される過程を評価する。問題なければ、患者を対象に安全性や有効性を確認する。
 阿部教授は記者会見で「一日も早く患者に届けることを考えている。小児のミトコンドリア病治療薬として承認された後には、ミトコンドリアの機能低下に伴う成人の難聴や筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病などに適応が広がる可能性がある」と話した。
 患者の治験参加者はまだ募集していないが、「ミトコンドリア先制医療」のホームページで情報を提供している。 (C)時事通信社