アスピリンの使用が心不全(HF)に与える影響に関してはさまざまな見解があり、よくわかっていない。ベルギー・University of LeuvenのBlerim Mujaj氏らは、HFの危険因子を1つ以上有する例を対象にアスピリンの服用がその後のHF発症に及ぼす影響についてプール解析を実施。アスピリンの服用で、HF発症リスクが26%も上昇するとの結果をESC Heart Fail2021年11月22日オンライン版)に発表した。

6件の研究・3万例が対象  

 検討では、ベルギーを拠点として収集されているデータベースHeart 'Omics' in AGEing(HOMAGE)のデータを用いた。HOMAGEには複数国の21件の研究が登録されている。21件のうち、ベースライン時にアスピリン使用の有無が判明し、その後の致死性/非致死性HFイベントに関するデータが得られた6件〔①ASCOT(スカンジナビア諸国、英国、アイルランド)、②FLEMENGHO(ベルギー)、③HEALTH ABC(米国)、④HULL LIFE LAB(英国)、⑤PREDICTOR(イタリア)、PROSPER(スコットランド、アイルランド、オランダ)〕をプール解析した。対象は、HFの危険因子(喫煙、肥満、高血圧、コレステロール高値、糖尿病、心血管疾患)を1つ以上有している3万827例で、死亡、HFイベント発生または試験終了まで追跡した。

 主要評価項目は、致死性および非致死性HFとし、Derivation集団として①ASCOT(アスピリン群3,688例、対照群1万5,569例)の解析を行い、Validation集団として②~⑥の5件の研究(アスピリン群4,010例、対照群7,560例)を解析。さらに6件の研究全体(アスピリン群7,698例、対照群2万3,129例)の解析や、傾向スコアマッチング(両群各7,186例)による解析なども実施し、アスピリンがHFに寄与するかを検証した。

 データロック日は2017年3月14日とした。

アスピリン服用で全ての調整モデルでHFリスク上昇

 ベースラインにおける全体の主な患者背景は、平均年齢が66.8歳、女性が33.9%、糖尿病の既往が21.5%、喫煙者が26.4%、高血圧が85.5%、降圧薬服用が81.7%で、その他に心筋梗塞、冠動脈心疾患、脳卒中、心房細動の既往歴はそれぞれ2.8%、26.4%、9.6%、1.1%だった。追跡期間の中央値は5.3年だった。16万4,913人・年の追跡の結果、全体における主要評価項目の発生は1,330例認められ、1,000人・年当たりアスピリン群14.5人(95%CI 13.4~15.7人)、対照群5.9人(同5.5~6.4人)だった。Derivation集団では、1000人・年当たりアスピリン群4.3人(95%CI 3.5~5.3人)、対照群2.4人(同21~2.7人)、Validation集団ではそれぞれ24.4人(同22.4~26.7人)、13.8人(同12.7~15.0人)であった。

 次に、調整項目に応じてモデル1(各試験、性、年齢で調整)、モデル2(モデル1+BMI、喫煙状況、飲酒状況、血圧、心拍数、総コレステロール/HDLコレステロール比、クレアチニン値で調整)、モデル3(モデル2+レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害薬、カルシウム拮抗薬、利尿薬、β遮断薬、スタチンで調整)、モデル4(モデル3+心血管疾患の既往歴で調整)に分け、各集団におけるハザード比(HR)を算出した。

 その結果、モデル1~4のHRは、Derivation集団〔HR 1.43(P=0.006)~1.32(P=0.03)〕、Validation集団〔同1.52(P<0.001)~1.17(P=0.02)〕、全体〔同1.52(P<0.001)~1.26(P<0.001)〕、心血管疾患の既往なしの集団〔同1.33(P<0.001)~1.27(P=0.001)〕、最初の2年間はHFが認められなかった集団〔同1.44(P<0.001)~1.23(P=0.004)〕とも調整項目が増えるにつれて低下する傾向にあったが、いずれのモデルにおいても全ての集団でアスピリンの使用によりHFリスクが有意に上昇した。また、傾向スコアマッチングモデルにおける対照群に対するアスピリン群のHRは1.26(95%CI 1.10~1.44、P<0.001)だった。

 以上を踏まえ、Mujaj氏は「HFの危険因子が1つ以上ある患者において、心疾患の既往の有無にかかわらずアスピリンがHF発症リスクに寄与する可能性を示した初めての大規模研究である。今後、今回の結果が再現できるかをランダム化比較試験での検証が必要」と指摘。エビデンスが蓄積されるまでの対応として、「今回の検討に基づくと、HF患者やHFの危険因子を有する例に対してアスピリン投与には慎重になる必要がある」とまとめた。  

(編集部)