自然災害が多いわが国では、今年(2021年)7~8月にも一部の地域が集中豪雨に見舞われ、土石流災害や河川の氾濫により死傷者が発生している。発災に伴い避難生活を余儀なくされる事態も発生した。エコノミークラス症候群予防・検診支援会は、12月4日に「第8回新潟県中越大震災シンポジウム」を開催。同会会長で新潟大学医歯学総合研究科特任教授の榛沢和彦氏は、発災時の車中泊が血栓症のリスクであることに変わりはないと指摘した上で、車中泊の質を改善できれば分散避難先になりうると述べた。(関連記事「震災後DVTは将来のイベントに影響」「コロナ下で"質の高い車中泊"!?」)

100%安全な災害後の車中泊はない

 榛沢氏らは、2004年の新潟県中越地震発災後に車中泊をしていた被災者に血栓症が多い点に着目、下肢静脈超音波検査を用いた検討から車中泊が静脈静脈血栓症/肺塞栓症(VTE/PE)の発症リスクであることを報告している。しかし、その後も発災時に車中泊を強いられるケースは少なくなく、被災者の血栓症の報告は後を絶たない。

 この点に鑑み、同氏は「自動車ユーザーは、平時から車中泊による血栓症リスクと予防法を知ることが重要」と述べた。具体的には、①100%安全な災害後の車中泊はない、②VTE/PEの原因(長時間の坐位、水分不足、運動不足)、③予防法(身体を伸ばした状態での睡眠、定期的な水分摂取と下肢の運動、弾性ストッキングの装着)―を挙げた。その上で、平時に準備しておくべきものとして、飲料・非常食・弾性ストッキングに加え、車中泊ができる場所の確認(自治体の避難場所マップ)、車中泊をしていることを外部に知らせるスマートフォンやパソコンなどのツールを提案した。(関連記事「被災地の車中泊,やむをえなければこう対応」)

四者で発症予防の取り組みを

 その一方で、自動車メーカー側には前述の①~③をユーザーに周知するとともに、水平状態にできるシートやVTE/PE発症予防のための装備品開発も求められる。

 さらに、自治体は車中泊ができる場所や車中泊者への災害支援物資の配布場所の案内、車中泊者の確認方法の準備が必要で、報道関係者には平時に国・自治体と防災協定を結び、発災後は定期的に予防法を知らせ、下肢に異常を感じた際はただちに車中泊をやめるなどの情報発信が期待される。

 榛沢氏は、発災時の車中泊が血栓症の危険因子であることに変わりはないと強調。しかし「周囲を気にして避難所に滞在できず、車中泊を余儀なくされる被災者もいる。また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時には、分散避難場所として車中泊も選択肢の1つであった」と説明。医療関係者・自動車メーカー・自治体・報道関係者の四者が一体となってVTE/PEの発症予防に取り組むことで、質の高い車中泊が実現しうると述べた。

 その他、同シンポジウムでは「厳冬下での車中泊における注意点」をテーマに日本赤十字北海道看護大学看護薬理学領域教授で災害対策教育センターセンター長の根本昌宏氏が講演した。雑誌などで車中泊やアウトドア情報を展開するカーネル株式会社表取締役社長の大橋保之氏も登壇。イタリアから、Italian Civil ProtectionのMarilena Esposit氏が同国の災害支援の状況を報告した。

(田上玲子)