英国で循環器内科医を目指す若手医師の10人に1人が、研修中にいじめを受けたことがあると回答していることが、英・Keble College, Oxford UniversityのChristian F. Camm氏らの調査で明らかになった。詳報はHeart2021年12月6日オンライン版)に掲載された。

過去4週間以内にいじめや不適切な言動を直接的または間接的に受けた経験はある?

 医師に対するいじめは、職業上のパフォーマンスおよびメンタルヘルスの低下に加え、担当する患者の健康状態の悪化とも関連することが指摘されている。さらに、いじめを目撃した人にも影響を及ぼす可能性があるなど、いじめによる被害は多くの人に波及する。特に若手医師に対するいじめは一般的に行われているようだ。

 今回Camm氏らは、同国内の循環器内科研修医を対象にBritish Junior Cardiologists' Associationが2017~20年に実施した調査において、過去4週間以内にいじめや不適切な言動を直接的または間接的に受けた経験について回答を求めた。

 完全回答は計2,057人中1,358人(男性72.7%、33.7歳)から得られた。75.6%が同国の大学医学部で学位を取得し、96.0%がフルタイムで勤務。研修先は循環器センター(58.9%)、地方総合病院(36.7%)などだった。

「意見や見解を無視された」「突発的な怒りの矛先になった」

 研修先の循環器内科でいじめを受けた経験があるとの回答は約10人に1人(平均11.5%)に上り、この傾向は毎年ほぼ同じであった。いじめを目撃した研修医の割合は約3人に1人(32%)だった。

 男性医師に比べ女性医師では、性差別的な言葉によるいじめを受けた割合が有意に高く(4.3% vs. 14.0%、P<0.001)、同国の大学医学部を卒業した研修医に比べ同国以外の卒業者は人種差別的な言葉によるいじめを受けた割合が高かった(1.2% vs. 3.4%、P=0.17)。

 いじめの内容は、「意見や見解を無視された」(11.5%)、「価値がない/役立たずだと感じさせられた」(9.2%)、「大声で怒鳴られたり、突発的な怒りの矛先となった」(7.6%)など(2020年調査)。研修医をいじめた相手として、循環器内科の上級医(82.4%)、他科の上級医(70.3%)が挙げられた(2019年および2020年調査)。

 自由記載では、いじめにあった研修医が精神的影響によって研修を辞めたくなったり、職場を変えざるをえない者もいる現状や、いじめが常態化しているにもかかわらず放置されていたり、いじめ問題を提起してもなにも変わらなかったという実態も明らかになった。

いじめは上級医の行動の手本!?

 Camm氏らは「今回の調査結果は単にいじめを行っている者への不満を反映しているものと捉える向きもあるだろう」と推察。しかし「研修医へのいじめ問題は、患者の安全確保や医療が逼迫する中での研修医の離職を防止する上で、優先的に取り組む必要がある」と結論している。

 英・Chelsea and Westminster Healthcare NHS TrustのResham Baruah氏、Emma Sedgwick氏は、同誌の付随論評で「研修医に対するいじめは、上級医が経験するプレッシャーの増大、燃え尽き、地位や金銭的報酬の喪失に対する不適切な反応の可能性がある」と指摘。「上級医は何世代にもわたって行動の手本として診療科内でいじめを行ってきた。いじめを常態化させるだけでなく、好ましい行動としていじめを助長しかねない」と付言している。

 職場のいじめ問題を解決するには、労働条件の改善、ワークライフバランスの見直し、仕事への満足度の向上、ストレスを認識し管理するトレーニングの実施が有効であるとされている。Camm氏らは「いじめの文化を変えるには、循環器内科に所属する者全員で協力する必要がある」と強調している。

(田上玲子)