武田薬品工業は12月10日、ブラジキニンB2受容体拮抗薬イカチバント(商品名フィラジル皮下注30mgシリンジ)について、遺伝性血管性浮腫(HAE)の小児患者への適応拡大申請を行ったと発表した(関連記事「発作予防薬が登場した遺伝性血管性浮腫」)。

発症が早期である方が浮腫の影響が深刻

 HAEは、血液中の補体第1成分阻害因子(C1インヒビター:C1-INH)の遺伝子異常によりC1-INHの欠損および機能不全が生じるまれな遺伝性疾患である。顔面、喉、手、腹部、足、性器など体のさまざまな場所で浮腫発作が繰り返し発生し、喉に生じると気道が閉塞され、呼吸困難により窒息死する恐れもある。

 世界の罹患率は5万人に1人(Br J Hosp Med 2006; 67: 654-657)、日本では2,000~3,000人の患者がいると推定されているが、認知度の低さから診断例は450人程度にとどまり、未診断例が数多く存在すると考えられている(Allergol Int 2021; 70: 45-54)。

 2018年に、成人のHAEを適応症として自己注射が可能な治療薬イカチバントが発売され、急性発作時にも投与できるため早期治療が可能となった。

 一方、HAEの平均発症年齢は11.2歳で、早期発症例ほど浮腫による影響が深刻との報告もあり(Am J Med 2006; 119: 267-274)、18歳未満の小児患者への治療選択肢が求められていた。

成人患者への標準治療薬としての実績がある

 今回の小児に対するイカチバントの適応拡大申請は、主に2歳以上18歳未満の小児に対する同薬の安全性と有効性、薬物動態を評価した国内の多施設共同第Ⅲ相非盲検試験(jRCT2041200073)および国外の多施設共同第Ⅲ相非盲検試験(NCT04654351)の結果に基づく。

 いずれの試験でも同薬の安全性と有効性が示され、国内の第Ⅲ相試験における小児患者の治療反応は、国内外の成人患者を対象とした第Ⅲ相試験や小児患者を対象とした国外の第Ⅲ相試験で認められたものと類似していた。

 同社日本開発センター所長の廣田直美氏は「イカチバントは2018年の販売開始以降、日本人成人患者における標準治療薬としての実績を重ねてきた。今回の適応拡大が承認されれば、HAEの急性発作を起こした小児患者に対し、わが国で初めての治療選択肢となる。1人でも多くの小児患者に貢献できることを願っている」とコメントしている。

(渕本 稔)