日照曝露によって多発性硬化症(MS)リスクが低減することが示された。オーストラリア・Australian National UniversityのPrince Sebastian氏らと米・University of California San Francisco(UCSF)の研究者らは、米国の小児発症のMS患者を対象に日照曝露とMS発症リスクの関係を検討した結果をNeurology2021年12月8日オンライン版)で発表した。

1日30分屋外で過ごすとリスク半減

 日当たりのよい場所に住み、屋外で過ごす時間が長いと皮膚がんリスクが上昇する可能性がある。しかし、今回の研究で日照曝露はMS発症に保護的な作用を有する可能性が示唆された。

 対象は、米国の多施設で登録された小児MS患者332例と性・年齢をマッチングした非MS患者534例。日照・紫外線曝露の状況と小児MS発症リスクの関係を検討した。小児MS患者の年齢は3~22歳、平均罹病期間は7カ月。屋外で過ごした時間、帽子・洋服・日焼け止めなどの使用、出生時および研究期間に居住していた地域から算出した紫外線曝露量などから日照曝露量を算出した。

 過去に屋外で過ごした時間について患者と両親に質問したところ、直近の夏に屋外で過ごした時間が1日平均30分未満だった割合は、非MS患者の6%に対しMS患者では19%、1日平均1~2時間だった割合は18%と25%だった。

 条件付き多変量ロジスティック回帰分析を用いて性、年齢、人種、出生した季節、子供の肌の色、母親の教育歴、受動喫煙、過体重、エプスタイン・バーウイルス感染などのMS危険因子について調整し、夏期に屋外で過ごした1日平均時間とMS発症の関係を検討した。

 その結果、直近の夏に屋外で過ごした時間が1日平均30分未満の群に比べ、30分~1時間の群でMS発症リスクが52%〔調整オッズ比(aOR)0.48、95%CI 0.23~0.99、P=0.05〕、1~2時間の群では81%(同0.19、0.09~0.40、P<0.001)有意に低下した。

 上級共著者でUCSFのEmmanuelle Waubant氏は「MS発症予防において、1日1〜2時間屋外で過ごすことが最もメリットが大きいことが分かった。少なくとも30分屋外で過ごすことで、MS発症リスクをほぼ半減することができる。ただし、紫外線対策なしでの過剰な日照曝露は危険だと知っておくことは重要である。われわれの知見では屋外で過ごす時間が1日2時間以上になっても、1日1~2時間と比べてMS発症リスクは低下しなかった」と指摘した。

紫外線曝露でもリスクが低下

 また、夏期の紫外線曝露が多いほどMS発症リスクが低下し(1kJ/m2増加当たりのaOR 0.76、95%CI 0.62~0.94、P=0.01)、両者には用量依存関係が認められた。居住地域で見ると、ニューヨーク州の居住者に比べてフロリダ州の居住者ではMS発症リスクが21%低下すると推測された。さらに、1歳までの日照曝露量が多いほどMS発症リスクが低下することが分かった。Waubant氏は「日照曝露はビタミンD値を上昇させることが知られているが、加えてMSなどの疾患に保護的に作用する皮膚内の免疫細胞を刺激する。さらにビタミンDは免疫細胞の生物学的作用を変化させ、自己免疫疾患に対して保護的作用を示す」と説明した。

 これらを踏まえて同氏は「日照曝露時間の増加またはビタミンDの補充で、MS発症を予防または診断後の疾患経過を改善できるかどうかを臨床試験で検討する必要がある」と指摘。その上で「幸いにも、日焼け止めの使用によって日照曝露によるMS発症予防効果は低下しなかった。当面は、日当たりのいい場所に住むことと、必要に応じて日焼け止めを使いながら、特に夏季は毎日より長い時間、少なくとも30分は日光に当たることが、一親等内にMS患者がいる場合は特に、小児MS発症を予防するのに有効な手段だと考えられる」と結論した。

(大江 円)