米・マーベル・スタジオが製作するスーパーヒーローが活躍する映画は人気があるようだ。オーストラリア・University of QueenslandのSarah T. Fox氏らは、映画に登場する5人のスーパーヒーローの健康状態と将来リスクについて検討。スパイダーマンは柔軟性、敏捷性に優れるため「高齢になった際の転倒リスクは低いはず」と同氏ら。その一方で、正体はティーンエイジャーであるものの夜間に悪と戦うため十分な睡眠時間を確保できていない可能性が高く将来、肥満やメンタルヘルスの低下リスクがあるとBMJクリスマス号2021年12月13日オンライン版)に報告した。

爆音や複数の頭部損傷により認知症や身体的障害の高リスクに

 映画に出てくる架空のスーパーヒーローは独特の能力、個性、行動力を持つ注目すべき集団である。今回、Fox氏らは、スーパーヒーローたちの現在の健康状態と、加齢に伴う健康状態の変化との関連性を検討する目的で、2008~21年に公開されたマーベル映画24作品について、新型コロナウイルス感染症の流行によりロックダウンが行われた2020~21年に視聴し、レビューを行った。

 スーパーヒーローたちの健康的な加齢に寄与する因子として挙げられたのは、定期的な身体活動や運動を行っていること、認知症のリスク低下と関連する社会とのつながりや結束を保っていることだった。さらに、彼らはポジティブで楽観的な考え方を持っており、心理的な回復力や目的意識が高いことなども健康的な加齢と関連。また、ほとんどのスーパーヒーローには飲酒や喫煙の習慣がなかった。

 一方、健康を損なう因子を調べたところ、スーパーヒーローは爆音、大気汚染、複数の頭部損傷に繰り返しさらされており、将来において認知症の発症、身体的損傷や障害を来すリスクが高いことが分かった。

常に怒っているハルクに心疾患発症の恐れ

 さらにFox氏らは、症例研究として次のスーパーヒーロー5人について検討した。

  1. アイアンマン:『アイアンマン』
  2. ハルク:『ハルク』
  3. ブラック・ウィドウ:『ブラック・ウィドウ』
  4. ブラック・パンサー:『ブラック・パンサー』
  5. スパイダーマン:『スパイダーマン』

 ベジタリアンであるブラックパンサーは健康的な加齢が期待できる。一方、怒りなどの負の感情によって心拍数が1分間に200回を超えると超人に変身するハルクは、肥満であることと常に怒っていることから、心疾患などの慢性疾患を発症するリスクがある。ブラック・ウィドウは幼少期のトラウマ体験から、身体的・精神的疾患のリスクが高いと推測された。

 スパイダーマンは体力、柔軟性、敏捷性に優れ、高齢になった際の転倒リスクは軽減される。しかしほぼ毎晩、犯罪者と戦っているため、ティーンエイジャーに推奨されている8〜10時間の睡眠時間を確保できていない可能性が高い。その結果、肥満、精神衛生の低下、不慮の事故の発生などのリスクが高まる可能性がある。

 マーベル映画のスーパーヒーローたちは宇宙の平和を維持するため、人間の意識を変え、人工知能を創造し、宇宙で自由に行動できる技術の開発などに力を注いできた。しかし今後は、質の高い医療や社会的ケアをどう提供するのか、フレイルや認知症をどう予防していくのかなどの高齢社会の問題解決に努力の焦点を移すことを、Fox氏らは提案している。

「実現すれば、スーパーヒーローを含む全ての人が、高齢になっても質の高い生活を送ることができるだろう」と結論している。

(田上玲子)

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