日本老年医学会は昨日(12月13日)、『超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き』(以下、手引き)のうち「高血圧」を公式サイトで公開した。これは同学会が協力し、日本医師会が作成したもの。高齢者に特化した手引きとなっており、日常診療で高齢者に対する降圧薬の処方に迷った際に確認することができる。(関連記事「"高齢患者の適正処方"の手引きを公表」)

未治療・コントロール不良の高齢者は47%

 日本医師会は、日本老年医学会の協力を得て手引きを作成しており、2017年に公表した「安全な薬物療法」以降、地域包括診療加算・同診療料に関わる慢性疾患である「認知症」「糖尿病」「脂質異常症」を順次公開。今回、残る「高血圧」が公開された。

 わが国では、65歳以上の71%に高血圧〔収縮期血圧(SBP)140mmHg/拡張期血圧(DBP)90mmHg以上〕が認められる。未治療例(22%)および治療中にもかかわらずコントロール不良例(25%)が合わせて47%に及ぶことから、「大きな問題であると認識すべき」として注意を促している。

 日本人の高齢高血圧患者の特徴については、60歳代では世界保健機関(WHO)が定める食塩摂取量の基準(5g/日未満)を大きく上回っていること、65歳以上の男性ではメタボリックシンドロームが強く疑われる割合が40%に及ぶことが挙げられる。

 高血圧の診断に際しては、可能な限り家庭血圧を確認することを推奨。また診察室血圧測定については、特に高齢者で血圧動揺性が大きいため、1機会当たり複数回測定し、複数機会の値から総合的に判断するとしている。

高齢者に特有な情報を収集すべき

 高齢患者に高血圧治療を施行する目的は、脳心血管疾患および慢性腎臓病(CKD)の発症・進展・再発の抑制やそれらに伴う死亡リスクの低減にある。高血圧治療を開始する際には、家庭血圧値の管理能力、フレイル・要介護・認知症、誤嚥性肺炎、頻尿・尿失禁、服薬自己管理能力の有無やポリファーマシーの状態といった高齢者に特化した情報の収集が求められる。

 日本高血圧学会の『高血圧診療ガイド2020』の降圧目標値は、自力で通院が可能な健康状態の患者を対象としている点に注意したい。フレイルや要介護の患者、認知症患者では、降圧治療の開始基準や降圧目標値に関する十分なエビデンスがない。そのため治療のメリット・デメリット、実行可能性を含め個別に判断する。

副作用および使用上の注意などの情報を盛り込み一覧表に

 高齢者に対する降圧薬の選択は、併用療法を含め非高齢者と同様に行う。ただし、開始時は単剤を少量から投与し、75歳以上には常用量の半量から開始する。

 積極的適応がない高齢者高血圧の第一選択薬は、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬である。

 多病を有する高齢者において、多剤併用やそれに伴う薬物相互作用、有害事象の発現リスクが指摘されている。これに対しては「高齢者だからと言ってガイドラインを遵守せず必要な降圧薬の増量対応などをしないことは問題である」と指摘した上で、高齢患者における降圧薬の副作用および使用上の注意、禁忌や慎重投与に関する情報を盛り込んだ一覧表を掲載し、チェックを促している。

 高血圧専門医との連携基準については、二次性高血圧の疑いがあり特殊な検査や治療を要する例、DBP 120mmHg以上の未治療例、180/110mmHg以上例または利尿薬を含む3剤併用で降圧目標未達成例を挙げている。またCKD予防の観点から、高度蛋白尿(2+以上)、蛋白尿(試験紙法で1+以上)かつ血尿(試験紙法1+以上)、推算糸球体濾過量(eGFR)が40mL/分/1.73m2以下の場合も専門医師への紹介を考慮するとしている。

(田上玲子)