アルツハイマー病(AD)に対する抗アミロイドβ(Aβ)抗体aducanumabの承認の可否について、12月22日に開催される厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会で審議が行われる。同薬の最適使用推進ガイドラインについても審議する。aducanumabは米国で今年(2021年)6月に承認されたが、承認条件としてランダム化比較試験(RCT)の実施が求められた。欧州では11月に欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品委員会から承認に否定的な見解が示された。翻って日本では、患者や家族から同薬登場に歓迎の声が聞かれる一方で、認知症治療の専門医からは期待と同時に懸念も示されており、波乱含みの展開となっている。同薬が承認された場合、診断体制や副作用の管理体制、薬剤費や検査費を含む費用が医療財政に及ぼす影響の評価などさまざまな課題への対応が急務となる。

アミロイド関連画像異常が出現、3割に脳浮腫、2割に脳微小出血

 aducanumabは、全世界でバイオジェンとエーザイが共同開発を進めている抗Aβ抗体。Aβの中でも毒性が強いとされるAβ凝集体を標的とし、軽度認知障害(MCI)および軽症ADの患者において認知機能の低下(悪化)抑制が期待されている。

 同薬の有効性については、2件の第Ⅲ相試験(ENGAGE、EMERGE)でADの初期段階(MCIおよび軽度認知症)患者を対象に検討。だが、両試験の結果が異なったことで議論を呼んだ(関連記事「〔詳報〕アルツハイマー病新薬aducanumab」)。米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会では有効性を証明するエビデンスが不十分だとして承認を支持しない意見が大勢を占めたが、迅速承認されたため諮問委員3人が判断に抗議する形で辞任する事態となった。

 米国神経学会(AAN)がaducanumabの使用に際して脳神経内科医が患者の協働意思決定を支援するためのポジション・ステートメント(倫理的指針)を作成し、Neurology2021年11月17日オンライン版)に発表(関連記事「抗認知症薬aducanumabに"超慎重指針"」)。

 同指針では同薬が脳内のAβを減少させる一方で、「Aβの減少が患者に臨床的ベネフィット(認知機能の改善)をもたらすかはいまだ不明」と断じた。また、同薬投与例においてMRIで観察されるアミロイド関連画像異常 (ARIA)のリスクがあり、3割で脳浮腫、2割で脳微小出血が認められたことから、頻回なMRI検査によるモニタリングの必要性に加え、薬剤費が年間5万6,000万ドルと高額なため、リスクとベネフィットを含め意思決定をする上で十分な情報を患者および家族に提供するよう求めた。

課題は山積、アミロイド陽性ADの診断、副作用管理の体制整備を 

 aducanumabを国内で臨床導入するに当たっては既存の枠組みでは不十分であり、さまざまな課題への早急な対応が急務となる。11月26~28日に開催された第40回日本認知症学会では、同薬の国内導入をめぐり、認知症治療の専門医や医療経済学の専門家から、アミロイド陽性ADの診断体制や副作用の管理体制、薬剤費が医療財政に及ぼす影響の評価、患者および家族に対する正しい知識の普及などに関して、早急な対策を求める意見が相次いだ。

 まず、aducanumabの投与対象はAβの蓄積が確認された早期ADに限られており、非常に限られた患者しか該当しないとされる。同学会では認知症専門医からは「過大な期待を有する患者や家族に対し、正しい情報を伝えていく必要がある」「同薬の投与対象にならなかった患者への精神的なケアも必要」といった声が挙がった。

 また、アミロイド陽性のADを診断するには、アミロイドPET検査または脳脊髄液アミロイド検査の実施が必要だが、日本国内では特にアミロイドPET検査が可能な施設は限られており、地域偏在が大きいことも指摘されている。

 さらに、aducanumabの副作用であるARIAの出現により投与の中断、再開を繰り返すといった事例が国内の臨床試験で報告されている。そのため、医療現場からは、脳出血のリスクを考慮した除外基準の作成、MRIの撮像頻度やARIA出現に伴う投与中断基準の明確化など、課題解消への対応を求める意見も出ている。

(小沼紀子)