米・バイオジェンは昨日(12月20日)、米国で今年(2021年)6月に承認され、アルツハイマー病(AD)では初となる抗アミロイドβ(Aβ)抗体aducanumab(米国商品名ADUHELM)に関して、注射100mg/mL溶液の卸業者購入価格(WAC)を来年1月1日から約50%引き下げると発表した。患者の平均体重が74kgの場合、年間薬剤費は2万8,200ドル(約318万円)となる。薬剤費を軽減し、患者の治療アクセスの改善を目指す。

薬剤費が半減でも、なお大きい画像検査費負担

 今回の薬剤費の値下げについて、同社は「AD患者の自己負担費用を軽減し、米国の医療制度への潜在的な経済的影響の軽減を実現するための措置」としている。この措置により、来年には約5万人がaducanumabの治療を開始する可能性があると想定している。

 今回の引き下げに伴いaducanumabのWACは、同薬の投与対象となる軽度認知障害(MCI)または軽度認知症患者の平均体重(74kg)に対する、1回投与当たり2,171ドル(170mgバイアル479ドル、 300mgバイアル846ドル)。維持投与量(10mg/㎏)による年間薬剤費は2万8,200ドルとなる。

 ただ、米国神経学会(AAN)がNeurology2021年11月17日オンライン版)に発表したaducanumabの使用に際して脳神経内科医が患者の協働意思決定を支援するためのポジション・ステートメント(倫理的指針)では、年間薬剤費が5万6,000ドル(約640万円、2021年12月末まで)と高額であるのに加え、副作用としてアミロイド関連画像異常 〔ARIA(脳内浮腫や微小出血)〕のリスクがあるため、投与中はMRI検査による頻回なモニタリングに行う必要があるとしている(関連記事「抗認知症薬aducanumabに"超慎重指針"」)。MRIなどの画像検査など治療費も含めると年間10万ドル(約1,140万円)を超える可能性があると指摘されていた。

EMAの承認申請却下が、日本の承認可否に及ぼす影響は?

 aducanumabは米国で今年6月にランダム化比較試験(RCT)で有効性を検討することを条件に迅速承認されたが、欧州医薬品庁(EMA)は12月17日、同薬の承認申請を却下した。その理由として、ADの初期段階(MCIおよび軽度認知症)患者を対象に行われた同薬の2件の第Ⅲ相試験(ENGAGE、EMERGE)において、有効性が一方の試験でしか示せなかったこと。さらに、一部の患者でARIAを示唆する異常が生じ、潜在的に害を及ぼす可能性があるとして、「十分に安全であることを示せなかった。臨床現場でARIAを適切に監視し、管理できるかは明らかでない。投与によるベネフィットがリスクを上回っていない」と結論した。米・バイオジェンは同日、EMAの決定を受けて再審査を求めるとの声明を発表した。

 日本でもaducanumabについて、12月22日に厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会で承認の可否について審議される予定だ。米食品医薬品局(FDA)とEMAが同薬の承認をめぐり異なる判断を下したことや、EMAの決定が承認の可否の審議に影響を及ぼす能性もある。仮に承認されたとしても、投与対象となる患者の選定基準、施設基準、副作用の管理体制構築など課題への早急な対応が求められる。

(小沼紀子)