認知症に対する薬剤開発が期待される中、ドラッグリポジショニングにも目を向ける必要があるようだ。米・Cleveland ClinicのJiansong Fang氏らは、同国で承認された薬剤の中からアルツハイマー型認知症(AD)に有効な可能性があるものを選び出す手法を開発。勃起不全薬(商品名バイアグラ)および肺動脈性肺高血圧症治療薬(同レパチオ)として承認されているシルデナフィルを投与した患者では、AD発症リスクが約70%低減したとNature Aging2021年12月6日オンライン版)に報告した。

FDA承認の1,600種類以上から候補薬を特定

 ADの特徴は、脳内のアミロイド斑とタウ蛋白による神経原線維変化を認める点にある。これらを標的とする新薬の開発が加速しているが、現在のところ必ずしも臨床に還元されているわけではない。ADに対する新薬の開発が難航する状況において、異なるアプローチ法として既承認薬の中からAD候補薬を探索することが考えられる。

 今回、Fang氏らは、まずADの病態に関連する遺伝子の同定を行い、これらの遺伝子をつなぐ分子相互作用ネットワークを構築した。その際、アミロイドとタウ蛋白の両方に関連する遺伝子に注目し、米食品医薬品局(FDA)が承認した1,600種類以上の薬剤に関して、各薬剤の標的分子とAD分子相互作用ネットワークの構成要素との関連性を検討。AD関連遺伝子と密接に関連する66種類の薬剤が特定された。その多くは、ADに対する臨床試験で既に検討されていたことから、今回のアプローチ法が有効であることが分かった。

 さらに検討を進めたところ、ADに対する最有力候補薬はシルデナフィルであることを突き止めた。

第Ⅱ相ランダム化比較試験を計画

 次に、700万人以上の米国人の保険請求データを分析した結果、シルデナフィル非服用者に比べ服用者(ほぼ男性)では、6年間のAD発症リスクが69%低かった(ハザード比0.31、95%CI 0.25~0.39、P<1.0×10-8)。シルデナフィル服用によるADリスクの低減効果は性、年齢、他の疾患の合併などで調整後も維持されていた。

 Fang氏らは、シルデナフィルがAD発症リスクに及ぼす影響を解明するため、AD患者から採取し培養した神経幹細胞をシルデナフィルに曝露させた。その結果、神経細胞同士をつなぐ神経突起の成長が促進され、タウ蛋白のリン酸化が減弱することが分かった。

 ただし、同氏らは「今回、われわれはシルデナフィルの使用とAD発症リスクの低下との関連を示したにすぎない」としている。その上で「両者の因果関係を検証し、AD患者に対するシルデナフィルの臨床効果を確認するmechanistic trialおよび第Ⅱ相ランダム化比較試験を計画している」との展望を示した。

(田上玲子)