デンマークの人口に基づくコホート研究で、がんの骨転移(BM)を来した患者は肺炎や敗血症などの重症感染症のリスクが高く、これらを発症すると、死亡リスクが発症前の2倍以上に上昇する可能性が示された。同国・Aarhus University HospitalのThomas J. Hjelholt氏らが、1994~2013年にBMと診断された成人の固形がん患者2万3,336例を最大10年間追跡した調査の結果をBMJ Open2021; 11: e049831)に発表した。感染リスクは、BM診断後1カ月間はそれ以降よりも高いことが示された。

累積発症率、感染後の死亡率を検討

 固形がん患者の感染リスクに関する研究は少なく、BMと感染症による死亡リスクとの関係は不明である。がん患者のBMは最も消耗性で医療費がかかる合併症の1つで、予後不良とQOL低下に関連すると報告されている。Hjelholt氏らは、デンマークの全人口を対象とする医療データベースを用いて、BMを有するがん患者の全国的なコホートを構築、入院を必要とする感染症リスクおよび関連する死亡リスクについて検討した。

 1978~2013年にDanish Cancer Registryに登録された18歳以上の79万5,083例(基底細胞がんおよび血液悪性腫瘍は除外)から、デンマーク在住で1994年1月~2013年11月にBMと診断された固形がん患者2万3,336例を特定。2013年11月まで追跡し、感染症リスク分析(肺炎、敗血症、尿路感染症など一般的な重症感染症の累積発症率:死亡を競合リスクとし、入院までの期間を0~1カ月、0~1年、0~10年に分け算出)および死亡率分析〔感染症の診断日はtime-varying exposureとし、死亡率は①発症まで、②発症後―の2つのリスク期間で推定(発症した場合)※発症しなかった場合は①のみ〕を行った。

肺炎と敗血症は強力な死亡予測因子に

 2万3,336例の主な原発がん種は、前立腺が30.5%、乳房が22.8%、肺が17.3%。男性が全体の57.3%で、BM診断時に60歳以上は77%だった。がん診断から中央値1.5年(四分位範囲0.2~4.7年)でBMと診断された時点で、36.1%が併存症を有し〔チャールソン併存疾患指数(CCI)スコア1以上〕、41%にBM以外の転移が見られた。

 重症感染症の累積発症率は、BM診断後1カ月、1年、10年でそれぞれ4.6%(95%CI 4.3~4.9%)、14.0%(同13.5~14.4%)、20.0%(同19.5~20.5%)。発症率が最も高かったのは肺炎で、次いで尿路感染症、敗血症の順だった。1年および10年時点での重症感染症の発症率をがん種別に見ると、最も高かったのは前立腺がんだった。

 感染はBM診断後の死亡の強力な予測因子であり、年齢、性、併存症を調整後の死亡リスクは1カ月で発症前の約2倍に上昇〔調整ハザード比(HR)2.1、95%CI 1.8 ~ 2.3〕、その後遠隔期にやや上昇した(1年:調整HR 2.4、95%CI2.3~2.5、10年:同2.4、2.4~2.5)。

 特に肺炎と敗血症は最も強力な死亡の予測因子で、発症前に対する発症後の死亡の調整HRは1カ月でそれぞれ2.8(95%CI 2.4~ 3.2)と3.5 (同2.8 ~4.3)、1年で3.0(同2.8~3.2)と2.6(同2.4 ~2.9)、10年で2.9(同2.7~ 3.0)と2.6(同2.4~2.7)に上昇した。これらの結果は、原発がん種別に見ても一貫していた。

感染予防の重要性が浮き彫りに

 以上の結果から、Hjelholt氏らは「固形がんのBMを来した患者2万3,336例を対象とした全国コホート研究では、一般的な重症感染症リスクが高く、特に肺炎と敗血症による入院は最大10年間の追跡で2倍以上の死亡リスクの上昇に関連していた。BMを有するがん患者の感染予防の重要性が浮き彫りになった」と結論している。

 同氏はまた、「進行がん患者の感染予防は極めて重要だが、修正不能な危険因子のため困難な場合がある。好中球減少症患者への抗菌薬の予防的投与は感染率を低下させるが、死亡率には影響しない(Virulence 2016; 7: 298-308)。それでもメタ解析では、こうした予防的治療が全生存の改善に有望なことが示されている(Ann Oncol 2018; 29: 1903-1910)」と考察している。

(坂田真子)