沖縄県の米軍基地で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した問題で、感染者の所属部隊が米国出国時も日本への入国直後も米側が検査を実施していなかったことが判明した。岸田文雄首相が「G7(先進7カ国)で最も厳しい」と誇る水際対策の穴があらわになった形だ。米軍は運用改善を約束したが、県内を中心に不安や不信感が高まりそうだ。
 今月中旬のクラスター発生以来、政府は「在日米軍から『日本の方針に整合的な措置を取っている』と説明を受けている」と繰り返してきた。しかし、23日になると松野博一官房長官は一転、「整合的とは言えないことが明らかになった」と認めざるを得なかった。
 変異株「オミクロン株」の感染拡大を受け、日本政府は外国人の入国を11月末から原則停止。日本人の帰国や外国人の例外的入国でも、出国時と入国時に検査を義務付け、入国後14日間は自宅などで待機するよう求めている。
 しかし、日米地位協定の規定などにより、在日米軍にはこうした水際対策は適用されない。民間機で一般の空港から入国するケースでは到着時に日本側の検査を受けるが、軍用機で基地に到着する場合の検疫は米側に委ねられている。
 問題の部隊は11日、米国から軍用機で嘉手納飛行場(沖縄市など)に到着。キャンプ・ハンセン(金武町など)で待機中の入国後5日目のPCR検査で複数の感染者が確認された。日本政府がこの間の感染対策を米側に照会したところ、出入国時の検査は行わず、行動制限期間中も基地内の移動を認めていたことが分かった。
 キャンプ・ハンセンでは23日までに227人の感染が判明。同基地に勤務する日本人従業員ら10人のオミクロン株感染も確認された。
 林芳正外相は22日、首相の指示を受け、ラップ在日米軍司令官に出入国時の検査を徹底するよう電話で要請。ラップ司令官は「入国する全部隊員に出国前検査を実施する」と約束し、入国後3~5日後の入国時検査についても「追加措置を検討する」と応じた。
 地元も神経をとがらせている。玉城デニー知事は23日、首相官邸に栗生俊一官房副長官を訪ね、米軍人・軍属の沖縄への移動を感染収束まで停止させるよう要請。この後、記者団に「言語道断だ」と憤り、同席した金武町の仲間一町長も「日米同盟を語る資格がない」と米軍を批判した。 (C)時事通信社