世界中で感染が急速に広がっている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新たな変異株であるオミクロン株。国立感染症研究所は12月15日に最新情報をまとめ、「SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第4版)」として公開した(12月17日に修正)。オミクロン株の感染・伝播性について「限られた初期の情報だが、海外の疫学的評価から増加が示唆されている」と指摘。ワクチン2回接種による発症予防効果の低下の可能性が示唆されているとして、「感染拡大と患者増加のリスクを考慮した対策を講じる必要がある」と注意を促している。

著しい感染・伝播性の高さを懸念

 厚生労働省は12月22日、日本国内におけるオミクロン株の累計感染者が153人になったと発表。海外ではオミクロン株への置き換えが進み、主流となった英国では12月20日時点でオミクロン株の感染者12人が死亡したと報じられた。

 感染研は、B.1.1.529系統に分類される変異株を、感染・伝播性、抗原性の変化などを踏まえた評価に基づき、11月26日、注目すべき変異株(VOI:Variant of Interest))と位置付けると発表し、監視体制の強化を行ってきた。

 オミクロン株は基準株と比べ、スパイク蛋白質に30カ所程度のアミノ酸置換(以降「変異」とする)を有し、3カ所の小欠損と1カ所の挿入部位を持つという特徴がある。このうち15カ所程度の変異は、受容体結合部位(RBD)に存在する。

 オミクロン株については、11月24日に南アフリカから世界保健機関(WHO)に1例目のオミクロン株による感染例が報告されて以降、WHOが12月21日付SARS-CoV-2週報で、同日時点で106カ国においてオミクロン株の感染例が確認されたことを明らかにしている。欧米諸国では市中感染が示唆される事例の報告が急増している。

二次感染率はデルタ株の3.2倍

 オミクロン感染の震源地となった南アフリカでは2021年11月以降、SARS-CoV-2検査数、陽性例数、陽性率が増加傾向にあり、ゲノムサーベイランスでは10月はデルタ株が85%を占めていたが、11月にはSARS-CoV-2陽性例の70%がオミクロン株となった。急速にオミクロン株への置換が進んでいることから、国立感染症研究所は「オミクロン株の著しい感染・伝播性の高さが懸念される」としている。ただし、「感染・伝播性の評価に際しては、オミクロン株固有の感染・伝播性だけでなく、観察集団の特徴や過去の感染、ワクチン接種によって獲得した免疫からの逃避効率を考慮し、評価する必要がある」と指摘している。

 なお、英国において11月15~28日に検体を採取したオミクロン株感染例121例とデルタ株感染例7万2,761例を対象としたコホート研究では、オミクロン株感染例からの家庭内二次感染率はデルタ株感染例と比較して、調整なしオッズ比で2.6倍、年齢、性、ワクチン接種歴などで調整したオッズ比で3.2倍であった。また、家庭外の二次感染を含む二次感染率は2.1倍と推定された。

ファイザー製ワクチンの有効率、デルタ株60%、オミクロン株35%

 オミクロン株の有する変異は、これまでに検出された変異株の中で最も多様性があり、感染・伝播性の増強、既存のワクチンの効果の著しい低下、および再感染リスクの増加が強く懸念されるという。

 まず、ワクチンの効果に対する影響については、英国保健安全保障庁(UKHSA)が症例対照研究で、オミクロン株およびデルタ株感染による発症例を対象に、SARS-CoV-2ワクチンの2回目接種および3回目(ブースター)接種の有効性に関する暫定的な評価を実施。2021年11月27日~12月6日に実施した検査で、デルタ株感染者5万6,439例、オミクロン株感染者581例に分類し、ワクチンの有効率を算出した。

 その結果、ファイザー製ワクチンの2回目接種後2~9週間におけるオミクロン株に対する有効率は88%であり、デルタ株の88.2%と同等だった。しかし、2回目接種から10週以降ではデルタ株に比べオミクロン株に対する有効率が低かった。さらに、2回目接種から20週以降ではデルタ株に対する有効率が60%強であったのに対し、オミクロン株では35%程度と差が見られた。ただし、ファイザー製ワクチンの3回目接種から2週以降では、オミクロン株に対する発症予防効果はデルタ株より低いものの75.5%だった。

抗体製剤の有効性への影響は?

 オミクロン株においては、抗原性の変化により、SARS-CoV-2に対する抗体製剤の効果への影響も懸念されている。ソトロビマブ(商品名ゼビュディ)は、オミクロン株で認めるスパイク蛋白質の変異を持つシュードタイプウイルスに対して中和活性を維持しているという報告がある一方で、カシリビマブ/イムデビマブ(ロナプリーブ)はオミクロン株の分離ウイルスに対して中和活性を失っているという報告もある。 

重症度については知見が不十分

 オミクロン株感染例について、現時点では重症度について結論付けるだけの知見がないとされる。日本国内で12月15日までに報告されたオミクロン株感染者32例(全例が海外からの帰国者または入国者)のうち、入院した16例を対象にした観察研究の結果も公表。入院からの観察期間中央値は4日(範囲1~15日)、観察期間中に継続して無症状が4例、残り12例は有症状者でいずれも軽症だった。10歳未満の1例を除く15例全員にワクチン2回接種歴があった。年齢は10歳未満1例、20歳代6例、30歳代8例、40歳代8例、50歳代6例、60歳代2例、70歳代1例。男性22例、女性10例だった。

 国立感染症研究所では、「国内で経過観察されているオミクロン株感染例については全例軽症もしくは無症状で経過しているが、症例数が少なく、海外の報告を合わせても現時点では重症度の評価は困難である。引き続き国内外の動向を注視する必要がある」と考察している。

国内でも感染拡大とリスクを想定した対策を

 これらを踏まえて、当面の推奨される対策としては、①オミクロン株に関しては、現時点ではウイルスの性状に関する実験的な評価や疫学的な情報は限られており、高いワクチン接種率を達成している日本でも感染拡大と患者増加のリスクを想定した対策を講じる必要がある、②水際対策と並行して、検疫および国内での変異株PCR検査およびゲノムサーベイランスによる監視を引き続き行う必要がある、③マスクの着用の有無や接触時間にかかわらず、幅広な検査の対象としての対応を行うことが望ましいーと注意を促している。

(小沼紀子)