軽症者向けの新型コロナウイルス経口治療薬として初承認された「モルヌピラビル」は、国内で市中感染が相次ぐ「オミクロン株」など変異ウイルスにも効果があるとされ、期待が集まる。
 オミクロン株は、ウイルスが細胞に入る際に使う表面の突起に多くの変異があるため感染力が高く、ワクチンを2回接種しても感染するケースが目立つ。ワクチンは突起を標的に体内で抗体を作るもので、変異により効果が落ちた可能性がある。
 一方、モルヌピラビルは、RNAポリメラーゼという酵素を阻害することで、ウイルス複製にエラーを起こさせる薬。東邦大の舘田一博教授(感染症学)は「理論上は変異した部分の影響は受けない」ため、オミクロン株にも有効と解説する。
 入院や死亡のリスクを減らす効果は50%から30%程度に下方修正され、医療現場には「期待がしぼんだ」と落胆する声もある。それでも舘田氏は「30%でも抑えられるのなら、ないより良い。安心感を与えることができる」と話す。
 薬の有効性を高めるにはどうするべきか。北里大の中山哲夫特任教授(臨床ウイルス学)は「ウイルスが増えて症状がひどくなる頃に飲んでも効果は低い」と指摘。「発症し感染が確認されたらできるだけ早く飲むのが原則。症状が出たらすぐに医療機関を受診することが大切だ」と訴える。
 医療現場にとっても、飲み薬が実用化されるメリットは大きい。重症化を予防するとして普及する点滴薬「ロナプリーブ」は、医師らが定期的に患者を観察する必要があるが、飲み薬は外来での投与が可能。「医療従事者の負担が大きく減る」(中山氏)ことにつながる。舘田氏は「内服薬ができると、季節性インフルエンザなどと同じ感染症法上の5類に変わるきっかけとなるのでは」と期待感を示した。 (C)時事通信社