昨年(2020年)、告発された大阪大学病院での論文不正疑惑について調査した同大学観察研究倫理審査委員会は、医学系倫理指針に規定された「重大な不適合」に該当することを確認した。この結果を受け同大学病院は、12月20日に厚生労働大臣および文部科学大臣に報告したことを、同月23日に公式サイトで発表した。(関連記事「相次ぐ医学界の不祥事に喝!」「今、医学研究に求められる倫理とは」)

元医員は責任著者を兼務、元データの確認体制を改定

 同大学病院の元医員が発表した学術論文において研究活動上の特定不正行為が疑われるとする告発が昨年あった。

 これは、同大学病院で先進医療として実施された「非小細胞肺がん手術適応症例に対する周術期hANP(ハンプ)投与の多施設共同ランダム化第Ⅱ相比較試験(JANP study)」の計画書に、参考論文として用いられた後ろ向き観察研究の結果に関するものであった。研究は疫学研究指針の規定に沿って適正に実施されていたが、論文において結論を導き出すグラフにカルテとは異なる臨床検査値が用いられていた。

 同大学病院は今回の特定不正行為の発生要因として、研究の元データの信頼性確保が不十分だったこと、指導教官と元データの共有・確認がなされていなかったことなどを挙げている。

 2016年8月に同大学病院では、特定不正行為を防止するためのチェック項目を細かく定め、論文に使用した図表写真の元データは責任著者が確認し、バックアップデータを保管することとしていた。しかし今回、元医員は筆頭著者と責任著者を兼務していたことから、こうした場合は共著者が責任著者に代わって確認・署名するよう改定し、今年7月1日以降の投稿論文から適用されている。

 今回の特定不正行為によって患者に健康被害が生じることはないが、同大学病院は「研究に参加いただいた患者さんのご厚意に背く事態に至りましたことに対し、謹んで深くお詫び申し上げます。引き続き、本院では大阪大学大学院医学系研究科と連携して、論文不正の再発防止対策に努め、皆様に安心して医療を受けていただけるよう努力してまいります」としている。

(田上玲子)