日本臨床腫瘍学会と日本癌治療学会、日本癌学会は本日(12月27日)、3学会合同ゲノム医療推進タスクフォースを通じて、厚生労働省に「保険診療下でのがんゲノム医療の課題に関する要望書」を提出した。同要望書は、がんゲノムプロファイリング検査のメリットを最大化し、がん治療成績の向上に貢献することを目指すものであるという。

再評価すべき課題として3点を要望

 がん遺伝子パネル検査を用いたがん包括的ゲノムプロファイル検査は、わが国では2019年6月に保険適用となり、既に2万5,000例を超える検査が実施されているものの、臨床導入に関してはいまだ課題が山積されていることが多方面から指摘されている。この状況に鑑み、3学会合同ゲノム医療推進タスクフォースでは、がんゲノム医療の実装において想定される課題について、アカデミアとしてさまざまな意見を進言してきたが、それらが十分反映されているとは言い難い状況にある。 そこで今回の要望書では、がんゲノムプロファイリング検査の運用上の問題から再評価すべき課題として、以下の3点を要望した。

【再評価すべき具体的な内容】

1. がんゲノムプロファイリング検査の実施タイミングと対象について

2. 診療報酬の建て付けについて

3. 検査の管理と評価について

1.検査の実施タイミングの早急な再評価を

 現行のがんゲノムプロファイリング検査の診療報酬基準では、対象が固形がんのうち標準治療がない、または終了となった(終了見込みを含む)患者であり、検査提出時に8,000点、結果説明時に4万8,000点が算定可能となっている。同技術を「標準治療後」に限定する根拠の基となったのは、3学会が2017年10月に合同で策定した「次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス」だ。しかし同ガイダンスは2020年3月と5月に改訂されており、現在は治療ラインのみで検査時期は限定せず、その後の治療計画を考慮して「最適なタイミング」を検討すべきとしている。

 一方、米国におけるがんゲノムプロファイリング検査の対象は、Ⅲ~Ⅳ期の進行再発がんまたは再発/再燃/転移の全症例であり、初回治療の段階で検査が実施できる。これにより、がん患者の治療方針が的確にトリアージされ、効果の期待できる薬剤が適切なタイミングで提供されることが可能となる。

 また、がんゲノムプロファイリング検査にはコンパニオン診断機能が付いているが、現状の診療報酬点数は、コンパニオン診断が承認されているがん種ではコンパニオン診断に該当する点数(数千点)を算定するため、検査費用(約46万円)との大きな差額が生じ、差額分は病院の持ち出しとなる。それにより、患者がコンパニオン診断として検査を受けることは実質上困難となり、結果として、効果が期待される革新的医薬品が患者に提供されないという深刻な事態を招いている。

 こうした状況を受け、今回の要望書では、標準治療がないまたは終了した固形がん患者にがんゲノムプロファイリング検査を行い、その結果に基づくがん個別化医療(精密医療)を行おうとしても、①複数の薬物治療後の薬剤耐性出現による効果の減弱、②全身状態や臓器機能の悪化により治療対象となりにくい、③候補薬があっても多くが適用外であり使用できない-などの理由から、「患者のメリットや医療経済的なメリットが少ないことは自明である」と指摘。さらに、コンパニオン診断として行う場合の診療報酬が検査費用に見合わず、現実的にはコンパニオン診断後のプロファイリング検査は実施困難である点を強調した上で、がんゲノムプロファイリング検査の実施タイミングは「早急に再評価する必要があると考える」とした。

2.病院の損失にならない診療報酬の建て付けを

 前述の内容を踏まえて、2の診療報酬については、「現行の診療報酬区分を再検討し、検査提出時に病院の損失にならない検査費用を算定し、結果説明時にエキスパートパネル費用を算定する建て付けにしてほしい」と要望した。

 また、がんゲノムプロファイリング検査をコンパニオン診断として行う場合については、あくまで、がんゲノムプロファイリング検査として一貫した診療報酬とすることで全ての課題が解決する、との見解を示した。

3. 医療技術を含めた診療報酬の検討を

 現在のがんゲノムプロファイリング検査の診療報酬には、結果に大きく影響を及ぼす検体の準備や病理医による事前評価に関する技術料は含まれていない。さらに、検体提出から結果説明までに時間を要し(多くは4週間以上)、患者の状態が悪化して受診できなかったり、死亡した場合には結果説明時の算定が不可能となり、医療機関の損失(1例当たり48万円相当)が発生したりする点が大きな問題となっている。そこで今回、「検査の成功率を向上させるためにも、検査の管理と評価に関する医療技術を含めた診療報酬を検討してほしい」と訴えた。

 わが国においてがんゲノム医療を推進する上で、今回の要望書で挙げられた課題は大きな障壁となっている。こうした要望が、次回診療報酬改定時にどのように盛り込まれるかが注目される。

(髙田あや)