【ニューヨーク、ブリュッセル時事】日本の製薬大手エーザイと米バイオ医薬品大手バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ」は、米国での承認から半年余りが経過した。しかし、薬の効果を疑問視する声などを背景に、普及には逆風が吹いている。日本は現段階での導入を見送り、継続審議を決定。欧州でも規制当局による承認が困難な情勢だ。
 米食品医薬品局(FDA)は6月、アデュカヌマブを承認した。脳内に蓄積してアルツハイマー病の原因になるとみられているたんぱく質「アミロイドβ(ベータ)」を除去する初の治療薬として、大きな注目を浴びた。
 ただ、外部の専門家でつくるFDAの諮問委員会は昨年、承認に反対。薬の効果を臨床試験(治験)で十分確認できないとの意見が多数だった。
 これに対しFDAは、アデュカヌマブの投与によってアミロイドβが減少する「かなりの根拠」が治験で示されたと判断。根本的な治療薬がなく、新薬が待ち望まれている現状なども踏まえ、効果が多少不透明であっても使用を認める「迅速承認」制度を適用、ゴーサインを出した。決定は物議を醸した。
 アデュカヌマブは年間費用が5万6000ドル(約640万円)程度と高額で、患者や家族の経済的負担は重い。保険適用の見送りが相次いでいることも、普及を妨げている要因の一つだ。
 今年7~9月期のアデュカヌマブの販売額は30万ドル。バイオジェンは「米国で使用が遅れている」(ボナッソス最高経営責任者)と認め、来年1月から価格を約半額に引き下げることを決めた。
 バイオジェンは来年にも着手する新たな治験で薬の有効性を証明し、販売拡大につなげたい考え。ただ、治験開始から結論が出るまでには4年程度かかる見通しだ。
 一方、欧州連合(EU)では欧州医薬品庁(EMA)が今月17日、アデュカヌマブの販売承認を拒否するよう欧州委員会に勧告した。薬の作用と症状改善の因果関係が「確立されていない」と結論付けた。
 EMAはさらに、治験で一部患者の脳に出血や腫れを示唆する異常が認められ、安全性も不十分だと指摘。バイオジェンはEMAに再審議を求める方針を直ちに表明したが、EUでは当面、アデュカヌマブの実用化は難しそうだ。
 日本の厚生労働省は22日、薬事・食品衛生審議会の部会でアデュカヌマブの承認を見送り、今後の治験結果などを待って再審査することとした。 (C)時事通信社