カナダ・University of WaterlooのWajd Alkabbani氏らは、同国と英国の医療データベースに登録された2万例弱の成人2型糖尿病患者を対象に、SGLT2阻害薬による腎疾患の進行抑制効果を検証。その結果、SGLT2阻害薬はDPP-4阻害薬と比べ腎疾患の進行リスクを21%低下させたとBMJ Open Diab Res Care2021; 9: e002496)に発表した。

AKIリスクには差なし

 Alkabbani氏らはまず、カナダ・アルバータ州のレセプトデータベース(2014年1月1日~18年3月30日)および英国の一般診療データベースClinical Practice Research Datalink(2013年1月1日~18年11月29日)から、メトホルミンの単剤療法を開始した18歳以上の2型糖尿病患者を特定。そのうち、各国で発売開始後にSGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬の使用を開始した者を抽出した。

 次に、高次元傾向スコアを用いてマッチングさせたSGLT2阻害薬群とDPP-4阻害薬群を設定〔カナダ・コホート各7,470例(計1万4,940例)、英国コホート各1,635例(計3,270例)、両コホート計1万8,210例〕。これらの患者を死亡、登録抹消、治療中止、追跡終了のいずれか最も早い時点まで追跡した。

 有効性の主要評価項目は腎疾患の進行〔顕性アルブミン尿の新規発症、推算糸球体濾過量(eGFR)45mL/分/1.73m2以下かつ血清クレアチニン値倍化、腎代替療法の開始、腎疾患による入院または死亡の複合〕とした。安全性の主要評価項目は急性腎障害(AKI)の発症とした。

 Cox比例ハザード回帰モデルを用いて両コホートにおけるハザード比(HR)を算出した後、ランダム効果メタ解析によりデータを結合してプールHRを算出した。その結果、SGLT2阻害薬群ではDPP-4阻害薬群と比べて腎疾患進行リスクが有意に低かった(プールHR 0.79、95%CI 0.62~1.00)。

 安全性の主要評価項目としたAKI発症リスクについては、両群で有意差はなかった(プールHR 0.89、95%CI 0.58~1.36)。

進行リスクはSU薬、AKIリスクはインスリンと比べても低下

 他の糖尿病治療薬との比較では、SGLT2阻害薬はスルホニル尿素(SU)薬と比べて腎疾患進行リスクが有意に低く(プールHR 0.68、95%CI 0.51~0.89)、有意差はないものの、チアゾリジン薬(同0.87、0.13~5.89)、GLP-1受容体作動薬(同0.92、95%CI 0.57~1.49)、インスリン(同0.46、95%CI 0.19~1.11)との比較でも低リスクだった。

 また、SGLT2阻害薬によるAKI発症リスクはインスリンと比べて有意に低く(プールHR 0.49、95%CI 0.32~0.74)、有意差はないもののSU薬(同0.72、0.44~1.17)およびGLP-1受容体作動薬(同0.53、0.15~1.83)よりも低かった。

SGLT2阻害薬の製品別でAKIリスクに大差なし

 SGLT2阻害薬の製品別の検討では、有意差はないもののカナグリフロジン(プールHR 0.70、95%CI 0.45~1.09)およびダパグリフロジン(同0.80、0.57~1.15)はDPP-4阻害薬と比べて腎疾患進行リスクが低かった。エンパグリフロジンはリスク低下が認められなかった(同1.17、0.71~1.92)。

 また、AKI発症リスクはいずれのSGLT2阻害薬もDPP-4阻害薬と有意差がなく、プールHRはカナグリフロジンで1.19(95%CI 0.51~2.78)、ダパグリフロジンで0.64(同0.34~1.20)、エンパグリフロジンで1.99(同0.43~9.28)だった。

 以上を踏まえ、Alkabbani氏らは「カナダと英国のリアルワールドデータを用いた研究により、SGLT2阻害薬は他の糖尿病治療薬と比べてAKI発症リスクを上昇させずに腎保護作用を発揮することが示された」と結論している。

(太田敦子)