政府が新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」対策で「朝令暮改」を重ねている。航空会社に対する国際線の予約停止要請を3日で取り下げたのに続き、同株の濃厚接触者に大学・高校・中学入試の本試験を受験させない方針も3日で撤回。野党は国民を振り回したと批判している。
 「事前調整しておくべきだった。反省しなければならない」。末松信介文部科学相は27日の記者会見で、オミクロン株濃厚接触者の本試験受験は認めないと24日に大学などに通知した際、首相官邸と相談していなかったと説明した。その上で通知は撤回し、無症状など一定の条件を満たせば別室での受験を認めると軌道修正した。
 末松氏によると、文科省の通知はオミクロン株濃厚接触者に14日間の宿泊施設待機を求めるとの21日の岸田文雄首相の表明に合わせたものだ。同省の事務方は23日に末松氏の了解を得たが、官邸サイドには内閣官房コロナ対策推進室に連絡しただけだった。
 この通知にはインターネットで「受験生がかわいそうだ」などの批判が噴出。危機感を強めた首相は26日、週末にもかかわらず、通知を一両日中に見直すよう秘書官を通じて文科省に指示した。末松氏の会見はこれを受けたものだ。
 岸田政権がオミクロン株対応を打ち出し、国民の反発を受けて引っ込めた例はこれだけではない。国土交通省は11月29日、日本到着便の予約停止を国内外の航空会社に要請。「日本人の帰国も難しくなる」と批判が巻き起こると、首相の指示で12月2日に撤回した。官邸は事前に国交省から報告がなかったと説明している。
 二つのケースは「危機の時には、やり過ぎの方がまし」との首相の号令を踏まえ、省庁が自らの判断で動いた点で似通う。文科省の一件を受け、首相は周辺に「そんなに細かいところまで見なければいけないのか」とこぼしたが、政府内からは「官邸のガバナンス(統治)に問題がある」との声も漏れる。
 自民党内には「首相の聞く力が発揮された」と評価する声もある。しかし、立憲民主党の西村智奈美幹事長は28日の記者会見で「一言で言えば想像力がない。一つの方針でどのくらいの人がどういう影響を受けるか」と批判。「混乱するのは国民の方だ。首相は国民に寄り添うべきだ」と語った。 (C)時事通信社