【ワシントン時事】世界各地で物価が上がっている。新型コロナウイルス禍からの回復途上で、原材料・部品の調達から製品販売までのサプライチェーン(供給網)が目詰まりを起こし、モノの奪い合いになっているためだ。激しさを増す米中両国の「経済戦争」も貿易を妨げる。企業が安い製品を求めて調達先を世界中に広げるグローバル戦略は見直しを迫られ、「歴史的な転換期」(バイデン米大統領)を迎えている。
 貿易大国である米中で物価が急騰し、世界経済に影を落とす。2021年11月に米消費者物価は39年ぶりの上昇率を記録、中国でも卸売物価が26年ぶりの高い伸びとなった。世界の食料価格指数は過去最高水準に迫り、日本でも輸入牛肉や小麦粉などの食料品が値上がり。ガソリン価格も7年ぶりの高値圏にあり、消費者の懐を直撃している。
 22年もこの傾向が続きそうだ。国際通貨基金(IMF)によると、経済活動の再開で先行した米国と欧州連合(EU)の消費者物価上昇率は、コロナ流行前の水準に戻らず高止まりの状況が続く。日本や中国でも緩やかな上昇が見込まれ、岸田文雄首相は「世界の物価が上昇して、わが国に波及する懸念が強まる」と身構える。
 米中ハイテク競争の主戦場である半導体の供給制約は、デジタル化で需要が高まる自動車やスマートフォンの不足を招いた。日米欧の企業が「世界の工場」の役割を担ってきた中国を離れ、調達先を自国や近隣諸国に切り替える動きも目立つ。米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は「技術的な基準や商慣行などで米中間の相違が広がり、世界で企業のコストが上昇する」と影響の長期化を警告する。
 国際供給網の「脱中国依存」を推進する米国の外交戦略はインフレに拍車を掛け、皮肉にもバイデン政権を揺さぶっている。各種世論調査の平均値は不支持が支持を上回り、22年秋の中間選挙を前に物価高が一大争点に浮上。バイデン氏は原油高の抑制を狙い、日本などと石油の国家備蓄の協調放出を打ち出したが、効果は限定的だ。
 高インフレを封じ込めた米大統領はいない―。米メディアは、物価高で苦戦を強いられた1970年代のニクソン、カーター両大統領にバイデン氏をなぞらえる。「歴史的な転換期ではかつてない結束が重要だ」。バイデン氏は一国の旗振りだけではインフレに対応できないと限界を認めている。
 日本でも22年夏に参院選を控えており、岸田首相は「新しい資本主義」を掲げて産業振興策の具体化を急ぐ。主要国はコロナ変異株や米中摩擦といった共通の課題に対処するため巨額の財政支出をいとわない姿勢を見せるが、一段のインフレを招くリスクと背中合わせだ。 (C)時事通信社