新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染に伴う初発症状は、変異株によって発現の順序が異なることが、米・University of Southern California,のJoseph R. Larsen氏らの検討で分かった。結果の詳細をPLoS Comput Biol2021; 17: e1009629)に報告した。

従来株 vs. D614G変異株で解析

 Larsen氏らは、中国・武漢市で発生したSARS-CoV-2に感染した者が、どのような順番で症状を発現するのかを予測する数理モデルを開発した。

 今回、同氏らは欧州で急速に拡大し、米国での流行第一波で優勢だったD614G変異株に着目。変異株の種類が症状の発現順位に影響を及ぼすとの仮説を立て、数理モデルを用いて検証した。

 まず、D614G変異株の感染者が約70%を占める米国の大規模データセット(2020年1月22日~5月30日のCOVID-19患者37万3,883例)および、約2%である中国の大規模データセット(同年2月16~24日の5万5,924例)をそれぞれ解析し、結果を比較した。

香港での症状発現順は3番目のみ中国と異なる

 解析の結果、中国でのアウトブレイクでは、発熱の症状が先行する頻度が最も高く、次いで咳、吐き気嘔吐の順と推定された(症状の推移確率の誤差0.010)。

 一方、米国における初期症状は咳、発熱の順(症状の推移確率の誤差0.063)で、3番目が下痢となったことから、症状の発現順序と変異株との関連性が示唆された。

 Larsen氏らは両者の関連性を検討する目的で、両国以外の国のデータセット(香港59例、ブラジル6万5,310例)を追加して解析。香港でデータを収集していたのは武漢株が流行していた時期で、ブラジルのデータはD614G変異株が優勢であった時期に収集されていた。

 解析の結果、香港での症状発現順序は1~2番目が中国と同じで、3番目(下痢)のみ異なっていた。症状の推移確率の誤差を推計したところ0.017だった。

 一方、ブラジルでの症状発現順序は、米国と同じだった(症状の推移確率の誤差0.019)。

変異型では咳症状が先行し感染拡大

 さらに、D614G変異株流行前後で症状発現順序が異なるかを検討する目的で、日本のデータ(流行前244例、流行後2,634例)も解析。日本で武漢株からD614G変異株へと置き換わりが進むにつれ、米国と同じ発現順序に移行することが分かった。症状の発現順位に気候、年齢、合併症の有無による影響はなかった。

 以上の結果から、Larsen氏らは「ウイルス性感染症の症状は、ウイルスの変異によって発現順序が変わる可能性がある」と指摘。D614G変異株の易感染性の要因は、発熱で動けなくなる前に咳症状が先行するためとしている。

(田上玲子)