岸田文雄首相が新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」対応について、水際対策から国内対策に重点をシフトさせる姿勢を鮮明にした。全国でオミクロン株の市中感染が広がり、全体の新規感染者数が増加傾向に転じたことへの危機感からだ。通常国会前に調整していた外国訪問も土壇場で取りやめた。
 「水際対策の骨格は維持しつつ、重点を国内対策へ移す準備を始める」。首相は4日、三重県伊勢市での年頭記者会見で、オミクロン株への対応を見直す考えを表明した。
 今回の方向転換は「オミクロン株の市中感染が急拡大する可能性に備える」(首相)のが狙いだ。感染症専門家は昨年末、水際対策による侵入阻止は限界だとして国内対策に重点を移すよう提言したが、政府内には「水際対策を緩めるわけにはいかない」(高官)との慎重論があった。
 しかし、年末年始にオミクロン株の市中感染が各地で相次ぎ判明。これを含む国内の新規感染者数は約3カ月ぶりに1000人を超え、首相も提言受け入れを決断した。会見では、専門家が危惧する病床の逼迫(ひっぱく)を避けるため、オミクロン株の感染者全員を入院させる措置を改め、宿泊・自宅療養なども認めると明らかにした。
 首相は外交日程にもこだわらなかった。1日の年頭所感では「首脳外交をスタートさせる」と宣言。米国訪問の機会を探りつつ、6~8日のオーストラリア訪問を調整したが、4日の会見で「国内のコロナ対策に万全を期すため外遊は行わない」と言い切った。
 首相の矢継ぎ早な動きの背景には、夏の参院選を前にコロナ対応を誤れば、政権が揺らぎかねないとの懸念もある。菅義偉前首相が「後手」批判を浴び、退陣に追い込まれた経緯があるためだ。
 首相は会見で、今年の干支の「寅」には「慎む」の意味があると指摘した上で、自らに言い聞かせるように語った。「大胆に挑戦を行う一方、慎重に物事を進める謙虚さを忘れないよう肝に銘じる。特に慎重に取り組まなければならないのがコロナ対応だ」。 (C)時事通信社