【ワシントン、北京時事】米英仏中ロが3日、核保有国間の戦争回避に向けた共同声明を発表した。4日に開幕予定だった核拡散防止条約(NPT)再検討会議(新型コロナウイルス感染拡大のため延期)に合わせて準備されたもので、核保有五大国の地位と責任をアピールした形。ただ、米中対立激化などを背景に核戦略をめぐる思惑は交錯しており、NPTで義務付けられた核軍縮の道のりは険しい。
 ◇政権の姿勢反映か
 核軍縮推進派のバイデン米大統領は、核保有の目的は敵国からの核攻撃の抑止と核攻撃に対する報復に限るという「唯一目的化」をかねて提唱してきた。
 オバマ政権の副大統領だった2017年の演説で、唯一目的化を宣言するに足る条件が整ったと表明。大統領選に出馬した20年には「大統領になった暁には、同盟国や米軍と協議の上、唯一目的化の実現に向けて努力する」と宣言した。昨年3月に公表した国家安全保障戦略の暫定指針でも「核兵器の役割を縮小する」とうたった。
 バイデン政権は現在、核政策の指針となる「核態勢の見直し(NPR)」の策定作業中。唯一目的化や核兵器の役割縮小を盛り込むかが検討されている。共同声明で、核の用途は「自衛目的、侵略の抑止、戦争の回避」に限られるべきだと記された背景には、米政権のこうした姿勢が反映された可能性がある。
 ◇兵器開発に余念なし
 用途を限定した共同声明は、米国による核の先制使用のシナリオを脅威と捉える中国の意向も踏まえた内容だ。中国外務省の馬朝旭次官は3日、「5カ国の指導者が初めて核兵器問題に関し発表した声明だ」と評価。中国の保有は自衛目的で「先制不使用」を堅持していると正当化し、「核戦力を国家の安全を守る必要最低限に維持している」とも主張した。
 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、中国の保有核弾頭は昨年時点で約350発と米国の1割以下。米国防総省は中国の核弾頭が30年までに1000発に増えると予測する。しかし中国は、軍拡競争による財政負担がソ連崩壊の要因の一つとなった経緯を詳細に研究し、二の舞いとなることを警戒。量的競争に距離を置いている。
 その一方、核抑止力の向上には余念がない。米本土に到達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、最新の極超音速兵器の開発や実戦配備を急ぎ、米国をけん制している。
 ◇軍備管理交渉控え
 ロシアは、通常兵器で北大西洋条約機構(NATO)に水をあけられ、今も核が抑止力の要だ。共同声明の準備は「ロシア主導」(外務省)と説明。核兵器禁止条約発効で廃絶の機運が高まる中、保有を正当化する思惑もありそうだ。
 目下の狙いは、米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約が19年8月に失効後、ロシアに届く核兵器を欧州に配備させないことだ。プーチン大統領は「米国がミサイルと共にやってきた」と述べ、NATOの東方拡大やミサイル防衛(MD)用の発射装置の存在を問題視。対ウクライナ国境に軍を集結させる背景には、欧米を交渉に応じさせ、発射装置を撤去させたい意図もある。
 今月9日には、軍備管理をめぐる米ロの「戦略的安定対話」がジュネーブで始まる。新戦略兵器削減条約(新START)の後継体制も焦点だ。ロシアは表向き、中国と軍事協力を強化するが、内心では軍備管理に参加させて中国の核を制限したい考えともささやかれている。 (C)時事通信社