新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの接種後には、心筋関連事象(心筋炎心膜炎)のリスク上昇が示唆されている。英・Imperial College LondonのAnders Husby氏らは、デンマークの全国民データを用いた住民ベースのコホート研究でmRNAワクチン(ファイザー/ビオンテック製のBNT162b2およびモデルナ製のmRNA-1273)の接種と心筋炎心膜炎の発症との関連について検討。mRNA-1273接種者では接種後28日間の心筋炎心膜炎の発症率が有意に上昇していたが、絶対発症率は最も高い12~39歳の群でも10万人当たり5.7人と低く、ほとんどが軽症だったことをBMJ2021; 375: e068665)に報告した。

12歳以上の約500万人を解析

 医薬品安全性監視データなどにより、SARS-CoV-2のmRNAワクチンの接種と心筋炎心膜炎との関連が指摘されているが、特定の集団において両者の関連を検討したコホート研究の報告はない。そこで、Husby氏らはデンマークのワクチン接種登録や患者登録などのデータを用い、SARS-CoV-2のmRNAワクチンと心筋炎心膜炎との関連について検討した。

 解析対象は、12歳以上のデンマーク国民493万1,775人で、415万5,361人がSARS-CoV-2ワクチンを接種していた。そのうちmRNAワクチン接種者の内訳はBNT162b2が83.8%(348万2,295人)、mRNA-1273が12.0%(49万8,814人)で、2回接種完了率はそれぞれ98.1%、96.9%だった。

 追跡期間は2020年10月1日~21年10月5日、主要評価項目はトロポニン値の上昇と24時間以上の入院を伴う心筋炎または心筋心膜炎の診断とした。

10万人当たりの発生率、BNT162b2が1.4人、mRNA-1273が4.2人

 追跡期間中に269人が心筋炎心膜炎を発症していた。発症例の40%(108人)が12~39歳で、73%(196人)が男性であった。年齢、性、ワクチン優先接種対象群、接種時期、併存疾患を調整した結果、BNT162b2接種群では接種前と比べて接種後28日間の心筋炎心膜炎の発症率の有意な上昇は認められず〔調整後ハザード比(aHR)1.34、95%CI 0.90~2.00〕、12~39歳の群でも上昇は認められなかった(同1.48、0.74~2.98)。

 BNT162b2接種後28日間の心筋炎心膜炎の絶対発症率は、全体で10万人当たり1.4人(95%CI 1.0~1.8人)、12~39歳の群で10万人当たり1.6人(同1.0~2.6人)だった。

 一方、mRNA-1273接種群では、全体および12~39歳の群のいずれにおいても接種前と比べて接種後28日間の心筋炎心膜炎の発症率が有意に上昇していた(全体:aHR 3.92、95%CI 2.30~6.68、12~39歳群:同5.24、2.47~11.12)。

 mRNA-1273接種後28日間の心筋炎心膜炎の絶対発症率は、全体で10万人当たり4.2人(95%CI 2.6~6.4人)、12~39歳の群で10万人当たり5.7人(同3.3~9.3人)だった。

 また、両ワクチンとも、接種前と比べて接種後28日間に心停止または死亡のリスクが大幅に低下していた(BNT162b2:aHR 0.51、95%CI 0.49~0.53、mRNA-1273:同0.41、0.37~0.46)。

 さらに、層別化解析では両ワクチン接種群とも女性で接種後の心筋炎心膜炎の発症率の有意な上昇が認められた(BNT162b2:aHR 3.73、95%CI 1.82~7.65、mRNA-1273:同6.33、2.11~18.96)。一方、男性ではmRNA-1273接種群のみ関連していた(BNT162b2:同0.82、0.50~1.34、mRNA-1273:同3.22、1.75~5.93)。

 今回の研究結果について、Husby氏らは「デンマークの全国民データを用いたコホート研究において、mRNA-1273の接種と心筋炎心膜炎発症に強い関連が認められた。一方、BNT162b2の接種は女性においてのみ心筋炎心膜炎のリスク上昇に関連していた。また、全体的な心筋炎心膜炎の発症率は、BNT162b2と比べてmRNA-1273で約3~4倍であることが示された」と説明。ただし、心筋炎心膜炎の絶対リスクは低く、ほとんどが軽症であったとして、「SARS-CoV-2に対するmRNAワクチンの全体的な安全性を裏付けるエビデンスが得られた」と述べている。

(岬りり子)