新潟大学大学院包括歯科補綴学分野教授の小野高裕氏らの研究グループは、吹田研究登録者を対象に、規格化した方法で測定した「咀嚼能率」とメタボリックシンドローム(メタボ)罹患との関係を検証。咀嚼能が低い男性では、メタボ発症リスクが2.2倍で、特に血圧高値やトリグリセライド高値、高血糖のリスクが高いことが明らかになったとFront Cardiovasc Med2021年11月26日オンライン版)に発表した。

グミゼリーを噛んで咀嚼能を評価

 吹田研究は、大阪府吹田市の一般住民を対象とし、循環器疾患予防対策を推進するため、国立循環器病研究センターと吹田市医師会が1989年に開始した研究。これまでさまざまなデータが発表されている。

 今回の対象は、同研究の登録者の中から、2008年以降に歯科検診を含む健診を受診した 50~79歳で、調査期間内に2回受診し、初回時にメタボでなかった599人(男性254人、女性345人)とした。

 咀嚼能の測定は、専用に開発されたグミゼリーを30回噛んで増えた表面積を算出し、表面積が下位 4分の1を低値群、それ以外を通常群と規定。フォローアップ検査時の新規メタボならびにその構成要素(血圧高値、高血糖、脂質異常、肥満)の発症について、年齢、喫煙状況、歯周病を調整して解析し、通常群に対する低値群のリスクを性別に算出した。

 対象のうち、男性で低値群に該当したのは63人、通常群に該当したのは191人、女性ではそれぞれ86人、259人だった。ベースライン時の平均咀嚼能は、男性では通常群が5,615mm2、低値群が2,170mm2、女性ではそれぞれ5,267mm2、2,185mm2だった。その他の背景について同性間で有意な群間差が認められた項目は、男性では年齢(通常群65.5歳 vs. 低値群70.1歳)、空腹時血糖値(同104.0mg/dL vs. 109.0mg/dL)、女性では歯周病有病率(同37.8% vs. 54.7%)だった(全てP<0.05)。

女性では有意差認められず

 平均4.4年の追跡期間中、88人が新規にメタボを発症した。年齢、喫煙状況、歯周病で調整後の通常群に対する低値群のメタボ発症のハザード比(HR)は、男性で2.24(95%CI 1.12~4.50)と有意に高かった一方で、女性では1.14(同0.51~2.57)と有意差はなかった。また、メタボの構成要素を項目別に調整後の男性における通常群に対する低値群のメタボ発症のハザード比(HR)を見ると、腹部肥満(HR 1.96、95%CI 0.84~4.59)、HDLコレステロール低値(同1.83、0.30~11.36)では有意差がなかったものの、高血圧(同3.12、1.42~6.87)、トリグリセライド高値(同2.82、1.18~6.76)、空腹時血糖高値(同2.65、1.00~7.00)で有意にリスクが高く、咀嚼能が低いと将来において血圧、トリグリセライド値、血糖値が悪化し、メタボを発症のリスクが高まることが示唆された。一方、女性ではいずれの項目でも有意差が認められなかった。

 男性でメタボ発症リスクが高まるメカニズムとして、研究グループは「咀嚼能低下により、食べられる食物の選択肢が減り、ビタミンや食物繊維を多く含む野菜や果物摂取率が低下した可能性が考えられる。性差が見られたのは、男性と比べ女性では食に気を使う傾向があること、また自身で料理をする機会も多いことが要因だと考えられる。加えて、閉経期以降のホルモンの変化による影響もあり、男性と比べて咀嚼能低下の影響が出にくかったのではないか」と指摘している。

(編集部)