肺炎球菌ワクチンの導入は肺炎球菌感染症の大幅な減少をもたらしたが、ワクチンがカバーしていない血清型による感染者は依然として多い。こうした中、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)に7種の血清型を追加した20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)の安全性、忍容性、免疫原性を評価したピボタル第Ⅲ相二重盲検ランダム化比較試験の結果が明らかになった。同試験では、PCV20の安全性プロファイルはPCV13と同程度であることを確認。またPCV20によって誘導される免疫応答は、PCV13と共通する13種の血清型の全てにおいてPCV13に対し非劣性であり、追加された7種の血清型のうち6種で23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(PPSV23)に対して非劣性であることも示された。米・Meridian Clinical ResearchのBrandon Essink氏らがClin Infect Dis2021年12月23日オンライン版)に報告した。

追加された7種による症例の割合は約3割

 肺炎球菌は菌血症や細菌性髄膜炎、菌血症性肺炎といった侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)や副鼻腔炎、非菌血症性肺炎の起因菌として知られ、肺炎は乳幼児や高齢者の死因の上位を占めるなど、公衆衛生上の問題となっている。これらの肺炎球菌感染症を予防するため、肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)や肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(PPSV)などのワクチンが各国で導入されている。

 PPSVには、PCVよりも多くの血清型を含んでいるものの、T細胞非依存性抗原であるため長期的な免疫原性の持続は期待できず、非菌血症性肺炎に対する有効性は、特に感染者の多い高齢者でのエビデンスが不足している。一方、PCVはT細胞依存性抗原であることから、長期的な免疫原性の持続が期待でき、IPDだけでなく非菌血症性肺炎への有効性も示されている。

 米国では、2000年に予防接種プログラムに7価PCV(PCV7)が導入されたことによりIPDが5歳未満で76%、全年齢層で45%減少した。その後、PCV7からPCV13に切り替えられ、低年齢層や成人における肺炎球菌感染症のさらなる減少が見られた。しかし、世界的にワクチンに含まれない血清型の肺炎球菌に起因した肺炎球菌感染症の割合は依然として高い。そのため、より多くの血清型をカバーする肺炎球菌ワクチンの開発が求められていた。

 こうした中、今回報告された第Ⅲ相試験では、PCV13が含有する13種の血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、23F)に7種(8、10A、11A、12F、15B、22F、33F)を加えたPCV20の安全性、忍容性、免疫原性を評価した。なお、2017~18年の米国におけるIPD症例のうち、追加された7種が原因菌だった症例の割合は19~64歳で32%、65歳以上で28%と報告されている。

全ての血清型で強い免疫応答を誘導

 同試験は、2018年12月~19年12月に米国とスウェーデンで登録した全般的に健康または基礎疾患はあるが安定しており、肺炎球菌ワクチンの接種歴がない18歳以上の男女3,902例を対象に実施。このうち60歳以上が3,009例、50~59歳が445例、18~49歳が448例だった。

 まず対象をPCV20またはPCV13を1回接種する群にランダムに割り付けた。その1カ月後には60歳以上の対象のうちPCV20接種者には生理食塩水を接種し(1,514例)、PCV13接種者にはPPSV23を接種した(1,495例)。

 安全性の主な評価項目は接種後の局所反応、全身反応、有害事象、重篤な有害事象、慢性疾患の新規診断など。免疫原性の評価項目は各ワクチン接種後1カ月時の血清型特異的オプソニン化貪食活性(OPA)幾何平均抗体価(GMT)比などとし、非劣性基準はOPA GMT比の両側95%CIの下限値が0.5を上回る場合とした。

 検討の結果、PCV20群とPCV13群で接種後の局所反応および全身反応の重症度と頻度は同程度であった。60歳以上の対象におけるPCV20接種後の免疫応答は、PCV13と共通する13種の血清型の全てにおいてPCV13に対する非劣性が示された。また、PCV20で新たに追加された7種の血清型のうち8型を除く6種に関しても、共通する血清型を含有するPPSV23に対し非劣性が示された()。ただし、全体的な免疫原性のデータからは、PCV20は8型を含む20種全ての血清型で強い免疫応答を誘導することが示された。

. PCV20が含有する血清型の免疫原性

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Clin Infect Dis 2021年12月23日オンライン版

 PCV20群で11例、PCV13/PPSV23群で8例(いずれも60歳以上)が有害事象により試験を中止した。ワクチンに関連する有害事象はそれぞれ5例(注射部位の発赤または腫脹3例、動悸・不安1例、違和感1例)、4例(注射部位の疼痛、注射部位反応、頭痛、気管支過敏症各1例)だった。PCV20群で1例が死亡したが、ワクチンとは無関係の外傷によるものだった。

 以上を踏まえ、Essink氏らは「PCV20の安全性と忍容性のプロファイルはPCV13と同等であり、PCV13やPPSV23に遜色ない免疫原性を有することが示された。PCV20を導入することで成人の肺炎球菌感染症をより広範に予防できると予測される」と結論している。

(岬りり子)