裁判所がIT化に大きくかじを切っている。これまで「世界から周回遅れ」とやゆされていた司法のデジタル変革。コロナ禍が後押しする中、最高裁に専門部署も発足し改革が進んでいる。
 自由に席が選べるフリーアドレスの机に、それぞれがロッカーからパソコンを取り出し、オンラインでやりとりする。机にうずたかく積まれた資料の山はどこにも見当たらない。昨年4月に発足した最高裁のデジタル推進室。IT化に伴うペーパーレスをにらみ、これまでの執務室とは全く異なる光景が広がっていた。
 裁判所では民事、刑事など全分野でIT化に向けた検討が進む。その中で設備や予算といった統括的な役割を担うのがデジタル推進室だ。同室の染谷武宣審議官は「デジタル社会で裁判所が国民の期待に応えるため、大きなチャレンジをリードしたい」と意気込む。
 最も先行するのは民事分野。経済界から裁判迅速化の要望を受け、政府内で2017年から検討が始まった。法制審議会(法相の諮問機関)では、提訴から口頭弁論、判決までをIT化する議論が大詰めを迎え、25年度までの運用開始を目指す。
 このうち争点整理など法改正が不要な手続きでは20年2月から、裁判所と弁護士事務所をインターネットで結ぶ「ウェブ会議」を導入。全国の地裁で用いられ、コロナ禍で利用は大きく伸びた。染谷審議官は「コロナでIT化への流れが加速した」と指摘する。
 家庭裁判所でも昨年12月から、離婚や相続などの調停手続きでウェブ会議が一部試行された。
 一方、刑事分野は捜査段階も含めた改革を構想中で、法務省の検討会は裁判所や検察庁、警察庁、弁護士会などの代表がメンバーとなっている。公判では、書証や証人尋問のIT化が検討されているが、個人情報の扱いなど課題は多いという。
 あるベテラン裁判官は「IT化は『紙文化』だった裁判所の設備や働き方、裁判の在り方を一変させるだろう。戦後最大の改革の一つだ」と語った。 (C)時事通信社