世界疾病負担研究(GBD)2019の認知症予測研究者グループは、2050年における世界および地域、国別の認知症有病率を推算し、Lancet Public Health2022年1月6日オンライン版)に発表した。世界の認知症患者数は2019年の5,700万人から2050年には1億5,280万人へと約3倍に増加するとし、特にアフリカや中東で大幅に増加する一方、日本の増加率は世界で最も低いと推定した。

高BMI、空腹時高血糖、喫煙、低学歴を危険因子とした有病率予測

 認知症は現在、世界における第7位の死因であり、高齢者の障害と要介護の主な原因の1つとなっている。2020年に発表されたLancet認知症予防・介入・ケア委員会のレポート(Lancet 2020; 396: 413-446)では認知症の修正可能な12の危険因子として、若年期の低学歴、中年期の高血圧、過度のアルコール摂取、聴覚障害、頭部外傷、肥満、高年期のうつ病、運動不足、糖尿病、社会的孤立、喫煙、大気汚染を挙げ、これらの危険因子への曝露を回避できれば認知症の40%の発症を予防または遅らせることができるとしている。

 GBD2019認知症予測研究者グループは、2019~50年の世界195国・地域における、3つの危険因子(高BMI、空腹時高血糖、喫煙)に起因する認知症有病率を推算した。2050年の有病率は、相対リスクと危険因子の予測有病率を用いて算出し、学歴を予測因子に加えた線形回帰モデルを用いて3つの危険因子に起因しない認知症の有病率を推算。分解分析により3つの危険因子、教育、人口増加、高齢化の相対的寄与度が将来どのような傾向を示すかも評価した。

女性で多い傾向は変わらず

 解析の結果、世界の認知症患者数は2019年の5,700万人〔95%不確実性区間(UI)5,040万人〜6,510万人〕から、2050年には1億5,280万人(同1億3,080万人〜1億7,590万人)に増加すると推定された。

 認知症患者数が大幅に増加する一方、男女混合の年齢標準化有病率は横ばいで、同期間における変化率は0.1%(95%UI -7.5%~10.8%)であった。

 男女別に見ると、2019年の患者数は男性よりも女性が多かったが〔女性対男性比1.69(95%UI 1.64〜1.73)〕、この傾向も2050年まで継続すると推定された〔同1.67(1.52〜1.85)〕。

カタールでは19倍に

 国や地域別では、全ての国や地域で増加が見込まれる一方、増加率には大きなばらつきが見られた。

 最も増加率が高い地域の1つはサハラ以南のアフリカ東部で、2019年の約66万人から2050年には約300万人以上へと357%増加すると予測された。中でも、人口増加に伴いジブチ(473%)、エチオピア(443%)、南スーダン(396%)で増加率が高いと推定された。

 同様に、北アフリカと中東でも患者数の大幅な増加が推定され、2019年の約300万人から2050年の約1,400万人へと367%増加し、特にカタール(1,926%)、アラブ首長国連邦(1,795%)、バーレーン(1,084%)で大幅な増加が見込まれた。

日本の増加率は27%と最低

 最も増加率が低いのは高所得のアジア太平洋地域(日本、ブルネイ、韓国、シンガポール)で53%(95%UI 41〜67%)、2019年の約480万人から2050年には約740万人に増加すると推定された。特に日本の増加率は27%と世界で最も低く、約412万人から約524万人に増加すると見込まれた。この地域では、各年齢層における認知症リスクの低下が予想されており、教育や健康的な生活習慣などの予防策が奏効していることが示唆された。

 西欧諸国も増加率が低く、約800万人から約1,400万人へと74%の増加が見込まれている。

 認知症患者数の変化に寄与する危険因子を解析した結果、3つの危険因子による有病率の上昇、教育による有病率の低下は確認されたものの、これらの要因の影響はかなり小さかった。

 一方、人口の増加と高齢化による認知症有病率の上昇への強い影響が認められたが、相対的な比重は国・地域によって異なり、人口増加はサハラ以南のアフリカで、人口高齢化は東アジアでの患者増加に最も寄与すると推定された。

 同研究者グループの筆頭著者で米・University of Washington Institute for Health Metrics and EvaluationのEmma Nichols氏は「今回の研究は世界レベルでのより正確な認知症予測を提示し、認知症増加の要因を理解するための新たな知見を提供した。同時に、認知症の予防や危険因子の管理により注力する必要性が示された」と述べている。

(今手麻衣)