現在さまざまな抗てんかん薬が臨床で使用されているが、てんかん患者の30%以上は発作のコントロールが不十分と感じており、発作メカニズムの解明と代替戦略が望まれてきた。自然科学研究機構生理学研究所(NIPS)教授の深田正紀氏らのグループは、マウス脳を用いて遺伝性のてんかん発症に関わる膜貫通型蛋白質ADAM22の調節機構を検討。ADAM22はリン酸化され14-3-3蛋白質と結合することで正常に機能し、ADAM22とLGI1の量が閾値を下回るとてんかん発作に結び付くことをCell Reports(2021年12月15日オンライン版)に発表した。

ADAM22は通常マウスの10%、LGI1は50%あれば発症を抑制できる

 深田氏らのグループは以前、①てんかん発作に関連する膜貫通蛋白質ADAM22と分泌蛋白質LGI1が神経シナプス上で複合体を形成していること、②ADAM22-LGI1複合体の量が減少するとてんかんを引き起こすーことを報告している(Science 2006; 313: 1792-1795Nat Med 2015; 21: 19-26Proc Natl Acad Sci U S A 2021; 118: e2022580118)。そこで今回、ADAM22の生合成経路と分解のメカニズムを調べた。

 検討の結果、ADAM22が安定化してシナプス上で正常に機能するためには、リン酸化酵素PKAによってリン酸化され、14-3-3蛋白質と強固に結合することが必要だと分かった。リン酸化セリン残基(S832)をアラニン(A)に置換したリン酸化欠損変異であるS832Aを導入し、ADAM22がリン酸化されない遺伝子改変マウス(Adam22SA/SAマウス)を作製したところ、ADAM22は14-3-3蛋白質と結合できずに、AP2蛋白質と結合して細胞内に取り込まれて分解されることを見いだした(図1)。

図1. シナプス上のADAM22の調節機構

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(AMEDプレスリリース)

 ADAM22ノックアウトマウス(Adam22-/-)は、てんかん発作により生後早期に死亡することが報告されている(BMC Neurosci 2005; 6: 33)。今回の検討で、Adam22SA/SAマウスは脳内のADAM22量が野生型マウスの約40%まで減少することが分かった。また、Adam22cfn対立遺伝子を持ったマウスはADAM22蛋白質発現量が低下した(J Neurosci 2010; 30: 3857-3864)。

 そこで、てんかん発作の抑制に必要なADAM22量を検討するために、6種のマウス系統を作製し、ADAM22とLGI1の発現量を野生型マウスと比較した。

 その結果、Adam22cfn/cfnマウスではADAM22量が野生型マウスの約30%に低下し、Adam22cfn/-マウスでは約10%だった(図2)。これらのマウスはてんかん発作を引き起こさなかったため、ADAM22が野生型マウスの10%あれば致死性てんかん発作を引き起こさないことが推察された。

図2. 7系統マウスのADAM22とLGI1発現量

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 同様に、てんかん発作を抑制するために必要なLGI1量も検討した。Adam22SA/SA;Lgi1+/-マウスのLGI1量を測定すると、野生型マウスの約30%であり(図2)、114日後までに半数が自発性発作で突然死した(図3)。一方、LGI1量が約50%になるAdam22+/+;Lgi1+/-マウスとAdam22SA/SA;Lgi1+/+マウスは生存したため、LGI1は50%あれば死なないが30%では大半が死に至ることが分かった。

図3. Lgi1+/-、Adam22SA / SA、Adam22SA / SA; Lgi1+/-のKaplan-Meier生存プロット

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(図2、3ともCell Rep 2021; 37: 110107)

 深田氏らはこれらの結果より、致死性てんかん発作を抑制するにはADAM22が野生型マウスの10%、LGI1は50%必要であると結論づけた。

 同氏らは「これまでのてんかん治療薬は、γアミノ酪酸(GABA)やイオンチャネルに作用するものが多く、めまいや認知障害などの副作用が懸念されていた。ADAM22-LGI1複合体は、これまでと異なるてんかん治療のターゲットになりうるだろう」と述べている。

(平吉里奈)