政府は11日、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染急拡大を受け、在宅医療の強化やワクチン追加接種の前倒しを柱とする新たな対応方針を打ち出した。感染者の多くが軽症・無症状という特性を踏まえ、重症度に応じて医療資源を活用する狙いがある。
 ◇入退院基準見直し
 「重症者や中等症の患者、リスクの高い方に的確に医療を提供することに主眼を置く」。岸田文雄首相は11日、記者団にこう語り、第6波到来をにらんで準備してきた医療体制をより症状が重い感染者に振り向ける考えを示した。
 昨夏の第5波では、各地でコロナ患者用の病床が不足、自宅で容体が急変して亡くなる人も相次ぐなど「医療崩壊」の様相を呈した。
 今回、重症者らへの医療資源の集中とともに、医療逼迫(ひっぱく)を防ぐカギとみられるのが、訪問診療やオンラインを活用した在宅療養の強化だ。首相は、在宅・宿泊療養に対応する医療機関が全国で計画を3割上回る1万6000カ所に上ったとアピール。オミクロン株の入退院基準を見直し、軽症者を在宅で治療できる体制を確保すると強調した。
 後藤茂之厚生労働相も記者会見で、新たに承認された米メルク社の飲み薬について、患者が医療機関で受診すれば薬局に行かずに郵送で薬を受け取れるようにするなど在宅療養を後押しする考えを示した。
 もっとも、沖縄県では感染や濃厚接触者となった医師、看護師らの休業が503人(11日現在)となり、最大200人程度だった昨夏の水準を大きく上回る。今後、スタッフ不足が各地で広がれば、医療体制を維持できるかは見通せない。全国知事会会長の平井伸治鳥取県知事は11日、首相とのオンライン会談で、「濃厚接触者に対する14日間の自宅待機が、人材確保の支障になっている」と懸念を伝えた。
 ◇前倒し範囲拡大
 病床確保・飲み薬とともに、オミクロン対策の成否を握る3回目のワクチン接種。政府は米モデルナ社と追加契約した約1800万回分を活用して、医療従事者や高齢者以外でも追加接種の前倒しを図る。
 一方、11日時点の3回目接種率は0.7%。政府コロナ対策分科会の尾身茂会長は高齢者の追加接種を最優先課題として取り組むよう要望しており、首相は、平井氏に「大規模接種会場の設置を含めた接種体制の強化を強く要請する」と訴えた。
 「国内感染に備える時間を確保できた。内外のオミクロン株の感染状況の差は明らかだ」。首相は、先進7カ国(G7)の中で最も厳しいとされる水際対策をこう自賛した。ただ、オミクロン株への感染は3回目接種が日本より先行する欧米で急増する。首相が打ち出した対策の効果は、今後の政権の評価を左右しそうだ。 (C)時事通信社