新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染者が急速な勢いで増加している沖縄県。玉城デニー沖縄県知事は「オミクロン株の感染力は驚異的」とのコメントを発表したが、国立感染症研究所(NIID)は今年(2022年)1月11日、同県でオミクロン株感染例を対象に実施された疫学調査の結果をウェブサイトで公表した(IASR 2022年1月11日速報)。オミクロン株感染確定例の潜伏期間は3日で、国内外から報告されている同株以外の変異株の4.8日または5.1日より短いことが明らかになった。感染から発症までの期間が短いという特徴から感染が早く広がる恐れがあり、急速な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者数および濃厚接触者数の増加が予想される。感染確定例の66%はSARS-CoV-2ワクチンの2回接種完了例であり、ブレークスルー感染が主流を占めていることも分かった。

わずか2週間でオミクロン株にほぼ置き換わる

 SARS-CoV-2の新規変異株であるオミクロン株は、昨年12月21日までに日本を含め世界106カ国・地域で感染例が報告され、各国で感染拡大が見られている。日本国内では、昨年11月30日に初のオミクロン株感染例が成田空港検疫所の検査で確認され、以降12月27日までに計316例の感染例(確定例)が報告された。そのうち36例は検査前14日以内に渡航歴がなく、渡航歴のある者との接触も認められなかった。これらは、複数の都道府県(大阪府14例、京都府12例、愛知県、山口県各2例、東京都、富山県、静岡県、滋賀県、広島県、福岡県各1例)で発生が報告された。

 一方、沖縄県でオミクロン株感染例が初めて確認されたのは昨年12月17日。米軍基地(キャンプ・ハンセン)の従業員からで、同月30日時点で新規感染者にオミクロン株が占める割合は97%に達し、わずか2週間で新変異株への置き換えが急速に進んだ。

 今回のNIIDによる報告は、今年1月3日までに詳細な疫学情報が得られたオミクロン株感染例50例を対象とした記述疫学の結果。なお、報告には含まれていないが、在沖縄米軍基地においては昨年12月初旬、米本土から沖縄県に入国した部隊からSARS-CoV-2感染例が確認されて以降、連日多くの感染例が報告されており、今年1月2日時点で感染例は約400例となっている。

発症者の年齢中央値は44歳

 調査における症例定義は、昨年12月1日~今年1月1日に沖縄県で確認されたSARS-CoV-2検査陽性例(COVID-19症例)のうち、変異株ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査によりL452R変異陰性であった者を国内の流行系統の状況を参考にオミクロン株疑い例(疑い例)とした。また、ウイルスゲノム解析によりオミクロン株と確定した症例をオミクロン株確定例(確定例)とした。確定例については、県内の保健所が実施した積極的疫学調査結果(調査票)、県衛生環境研究所の検査結果、関係者からの聞き取り調査の情報を用いて記述疫学を行った。

 COVID-19患者400例のうち、疑い例は159例、確定例は64例であった。COVID-19症例と疑い例の検査結果判明日ごとの割合の経時的変化を見ると、昨年12月16日に県内初の疑い例が認められ、その後10日間は疑い例の探知は散発的だったが、同月26日以降に疑い例の割合は急上昇し、同月30日時点で97%に達した。

 確定例のうち詳細な疫学情報が得られた50例のうちCOVID-19症状のいずれか1つ以上の症状を最も早く発現したのは昨年12月12日の症例であり、確定例の発症日ピークは同月21日だった。しかし、それ以降も継続的なCOVID-19患者の発生が認められている。

 確定例の属性を見ると、男性が48%(24例)、女性が52%(26例)で、年齢中央値は44歳(四分位範囲27~53歳、範囲6~89歳)だった。

 SARS-CoV-2ワクチン接種歴を見ると、2回接種完了者(2回目接種後2週間以上経過例)が66%(33例)、部分接種者(1回接種例および2回目接種後2週間未満例)は6%(3例)、非接種者は28%(14例)で、ワクチン接種完了後に感染するブレークスルー感染が7割近く確認された。

大半が有症状者、無症状者はわずか4%

 確定例のうち有症状者が96%(48例)を占め、無症状者はわずか4%(2例)だった。症状の内訳を見ると(重複あり)、37.5℃以上の発熱が75%と最も多く、咳(60%)、全身倦怠感(52%)、咽頭痛(46%)、鼻水・鼻閉(38%)、頭痛(33%)、関節痛(25%)、呼吸困難(8%)、嗅覚・味覚障害(2%)が続いた。なお、今年1月10日時点で重症例や死亡例は確認されていない。

 確定例の推定される感染源は、職場内が28%(14例)、家族内が26%(13例)、家族や親戚、友人などとの集まり(会食や法事)が18%(9例)、県外はなし、不明・調査中が28%(14例)だった。

 行動歴や確定例との接触情報から、推定曝露機会が特定できた17例について詳細に調べた。その結果、潜伏期間(有症状者のみ)の中央値は3日(範囲2~5日)(ただし同居家族内の二次感染事例では最も早く発症した者のみを含めた)であった。

同居家族全員感染が3割に及ぶ

 また、オミクロン株確定例の潜伏期間は3日(範囲2~5日)であり、これまで国内や海外で報告されているオミクロン株以外の潜伏期間の4.8日または5.1日よりも短かった。このことから、急速な患者数の増加とそれに伴う濃厚接触者数の増加が予想され、宿泊療養施設や医療機関の逼迫が懸念される。

 ただし、症例数が限られていること、家庭内で最も探知の早かった二次感染事例を用いて算出していることから、一般化するにはさらなる調査が必要と考えられる。

 一方、同居家族の二次感染の割合については、国内では26.1%、海外では11.3%(ワクチン2回接種完了者)、25.8%(ワクチン非接種者)との報告があるが、今回の調査では31%だった。

 さらに、同居家族全員が感染した事例も27%で認められた。家族内初発例や同居家族全員がワクチン接種完了者であっても感染伝播を認めていることから、NIIDは「同居家庭内、特に高リスク者がいる家庭おける感染拡大を防ぐには、ウイルスを家庭に持ち込まないように社会生活における感染予防策を徹底する必要がある」と注意を喚起している。

(小沼紀子)